成功転職パターンその1 キャリアの横スライド展開
「自分には希少な価値を持つスキルも知識も経験もない!」と思った人も、あきらめるのは間違い。実は転職によってあなたの希少価値をアップすることもできる。それが“キャリアの横スライド展開”。キャリアの一部を活かしながら、別領域に自分自身を広げていくような転職パターンのこと。
例えばあなたが外資系の企業などの英語を喋れることがごく当たり前の企業に勤務していれば、そこでは英語が喋れる=希少価値ではないけれど、これが国内だけで事業展開する企業だったら状況は違うはず。
今まで国内だけで事業展開する企業に転職し、今後、新たに海外展開を始めようという部署に配属されたとすれば、オンリーワンの存在として人材価値は高まる。つまり、「代わりのきかない存在」というのは、必ずしも絶対的な尺度で測られるものではなく、相対的な関係の中で認識されるものなのだ。
今のように激しい時代の変化には、それに対応するための即戦力としての中途採用が欠かせない。そんな時代だからこそ、自分が持っているスキル・知識・経験が希少価値となりそうな企業を目利きして横スライド展開すれば、大幅な収入アップの転職も可能に!
【ケース3】
WEBディレクターのC菜さん(29)
今や売れっ子WEBディレクターのC菜さんは、かつては人材派遣会社の人材コーディネーターだった。彼女の部署の顧客は主にITベンチャー企業で、顧客のニーズを聞いて、WEBクリエイターの人材を紹介するのが主な仕事。それが縁で、C菜さんは自分自身もWEB関連のクリエイティブな仕事に身を投じたくなる。
考え抜いた末、C菜さんは会社を辞め、WEBデザインの専門学校に通うことにした。半年間でかなり高いスキルを習熟した彼女は、急成長を続ける情報サービス企業に、WEBデザイナーとして転職。採用の際にはWEBデザインのスキルのみならず、前職で培ったビジネスコミュニケーションのスキルも決め手になった。
それから3年、顧客との交渉力など、人材コーディネーターの時代に培ったビジネス経験とWEBのデザインスキルを掛け合わせた、総合的な力を買われてB菜さんはWEBディレクターに昇格。年収も転職前に比べ2倍近くの650万円にまで上がり、やりたい仕事と高報酬を手に入れた。
【サクセスポイント】
WEBデザイナーの世界では、ビジネスコミュニケーションのスキルがあることは当たり前ではない。でも実はクライアント対応が多い仕事なので、非常に重要なスキルだ。人材コーディネーターとしては当たり前のスキルが、WEBデザインの世界では希少価値になり昇進・収入アップにつながった。典型的なキャリアの横スライド展開の例。
Photo: Getty Images Realization & Text: Tomoko Hachiya
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ADVISER
田中和彦
株式会社プラネットファイブ/代表取締役。リクルートで人事課長、広報室課長、就職情報誌統括編集長を務め、現在はコンサルタントとして、「人材育成・組織活性、マネジメント、キャリアデザイン」などのテーマで、企業研修の講師や講演を年間150回以上務める。『出世する人、しない人の1ミリの差』『面接は心理戦で勝つ! ライバルを出し抜く就職・転職の裏ワザ』など著書多数。
https://www.planet-5.com/