特集
2018/04/02(月)
短期集中連載:広告とジェンダー

今、広告炎上はテクノロジーが防ぐ

なぜ女性を描く広告はしょっちゅう炎上するのか? 世界最大の広告会社グループWPPの中核企業、ジェイ・ウォルター・トンプソンでブランド・コミュニケーション戦略をリードする大橋久美子さんが解説する最終回は、ジェンダー問題の解決を人間ではなくテクノロジーが担っている理由を解説。

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Photo: Getty Images

偏見を利用する広告は時代遅れ

ここ数年は、目的を持っている“Purpose Brand”であるということが重要だといわれる時代になっています。モノにあふれる時代のなか、人々は“What(=モノそのもの)”ではなく、“Why(=そのブランドの存在理由)”に共感することで、何かを購入・使用します。人々の本質的な葛藤を解決し、より良い世界・より良い未来に一歩踏み出すサポートをする、そんな信念のあるブランドが、ファンに愛されるブランドになっていくのです。

そして、今、ジェンダー問題は、ブランドが取り組むべき大きな“Purpose”となっています。「ユニリーバ」の“AXE”は「男らしさの呪縛」から男性たちを解放しようとしていますし、いっぽうで「P&G」の生理用品“Always”は、キャンペーン“Like a girl”で「女の子らしくあれ!」というステレオタイプに対して挑戦しています。このメッセージは、今葛藤に直面している思春期の少年少女だけでなく、ステレオタイプに苦しめられてきた大人たちにとっても共感を集めるものとなっているのです。

Photo: Aflo

https://www.youtube.com/watch?v=XjJQBjWYDTs

(↑「女の子っぽく走って」「女の子っぽくボールを投げて」と依頼すると大抵の人は馬鹿にしたようなモノマネをすることを証明するキャンペーン。「女の子っぽい」「女の子らしい」は侮辱するための表現であり続けてきたからこそ、女性はそれを否定してきたのだとわかる。)
 
もちろん日本でこれらが機能するかというと難しいところもあります。ですが、単に炎上を防ぐという防御の姿勢は何も生み出しません。ジェンダーにまつわる炎上の裏にある、人間がなかなか気づかない真の潜在意識をテクノロジーを利用して冷静に分析して、ジェンダーがもつ偏見を手放し、一歩先の未来思考を作る。そんな攻めの姿勢をとることでブランドが共感され、一層強くなるという一例としては企業だけでなく社会も参考にしていくべきではないでしょうか。

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  • 大橋久美子/J・ウォルター・トンプソン・ジャパン 戦略プランニング本部長。東京大学文学部社会学科卒、博報堂マーケティング局、研究開発局を経て、2003年J・ウォルター・トンプソン・ジャパンに入社。広告業界で25年、アジアや日本の女性たちと向き合いながら、女性たちを輝かせるためのブランディングを行う。

    ※当該記事の内容は個人的な見解であり、会社の見解を反映するものではありません

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