特集
2018/03/09(金)
短期集中連載:広告とジェンダー

無自覚が生む炎上広告の現状

なぜ女性を描く広告はしょっちゅう炎上するのか? 世界最大の広告会社グループWPPの中核企業、ジェイ・ウォルター・トンプソンでブランド・コミュニケーション戦略をリードする大橋久美子さんが解説する第一回目は、炎上広告の現状と、それを生む差別への無自覚について。

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真剣&悪ノリで作られる差別的広告

https://www.youtube.com/watch?v=Qu3fcmQjwuI&t=82s

(↑ファストフード、自動車、スーパーボウルのCMなどは、ストレートの男性をターゲットにするため性的に露骨な表現が使用されることで有名)

広告の度重なる「性」にまつわる炎上がメディアをにぎわしています。それは大きく分けて2つ。ひとつは女性だけが家事・育児をするのが当然であるというステレオタイプな性別役割分担を描いたもの。もうひとつは、もちろんですが女性を性的対象として描いたものです。 
 
後者は、壇蜜さんを起用した宮城県観光誘致キャンペーンが有名です。性的連想をさせてインパクトや話題性を喚起することを狙ったのでしょうが、大きく炎上したことで話題になりました。観光客数が伸びているから結果オーライであるといった知事のコメントは、短期的売上げ・集客数ばかりを重視し長期的なブランドの価値向上(好き・ファンになってもらう)という観点が欠けているものだったと思います。

無意識に量産される「キッチン+女性」のイメージ。性別役割を利用した広告を、男女逆転させて再現するアーティストEli Rezkallahの作品が話題に。

Courtesy of Eli Rezkallah via Instagram

このような性的表現ステレオタイプ型に関しては、作り手側も「少し悪ノリかな」と自覚しながらも作っているのかもしれませんが、現在の日本に多いのは前者のステレオタイプの方。その表現が「性」の視点から見て問題であることに気づかない無意識のケースです。え? これが差別? と炎上してはじめて気づくことになるケースです。意思決定プロセスが男性主導であることが問題なのですが、仮に女性が入っていても発生してしまっている。これは女性たち自身もジェンダーの固定観念を刷り込まれてしまっているためであり、それほど無意識のものである証拠です。

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  • 大橋久美子/J・ウォルター・トンプソン・ジャパン 戦略プランニング本部長。東京大学文学部社会学科卒、博報堂マーケティング局、研究開発局を経て、2003年J・ウォルター・トンプソン・ジャパンに入社。広告業界で25年、アジアや日本の女性たちと向き合いながら、女性たちを輝かせるためのブランディングを行う。

    ※当該記事の内容は個人的な見解であり、会社の見解を反映するものではありません

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