よかれと思って炎上する広告にちらつく「あたしおかあさんだから」
2018/03/23(金)
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「欲しいもの何?」と訊いて誕生日プレゼントを買って来たのにがっかりされることと、「インサイトの誤解」は似ている。

人の言葉は本音を隠す

私たちが広告を作る際によく使う言葉に「インサイト」という言葉があります。辞書を見ると「洞察」という訳語が出ますが、消費者の心の奥底にある自分自身でさえ気がついていない潜在意識・ニーズであり、「隠れた欲求」とも言えます。潜在意識をうまく捉え、「そうそう、ホントはこれが欲しかったの」「わかる、私もこの気持ちわかる」といった、買いたい・使いたい気持ちを「喚起」することに成功している広告を、「インサイトがある広告」と評価したりします。調査等を通じて、多くの人々が気がついていない潜在ニーズ・インサイトを見つけられるかどうかが、広告、及び、そのブランドの成功を左右するといっても過言ではありません。
 
長くやっているキャンペーンには良いインサイトがあることが多いです。たとえば「金曜日はプレモルの日」は、平日は自己抑制しながら過ごしている日本のビジネスパーソンの、一週間の最後には少しいいビールで自分にご褒美をしたいという潜在ニーズにマッチしています。「ファブリーズで洗おう」は、肌に触れて清潔にしていたいけれど洗濯はできないもの(ベッドやソファなど)も、本当は洗ってしまいたいという潜在的な欲求に応えたメッセージになっています。

https://www.youtube.com/watch?v=Mj9K-XaxElE

(↑インサイトを的確に捉えた「ファブリーズ」の広告)
 
「(普段は安いものを選んでしまうけど)金曜日だけはいいお酒が飲みたい!」「(無理だってあきらめているけど)ソファだって洗えるものなら洗いたい!」などは、確かに聞きとれば出てくる本音でしょう。ところが人が口にする言葉は必ずしも本音とは限りません。人は「インサイト」をそうそう簡単に表に出しません。出せないのです。聞き取り調査をしたはずなのに、街頭インタビューだってやったはずなのに、大量のアンケートだって取ったはずなのに、そこに「インサイト」が含まれていない場合がある。その罠にはまった結果が炎上広告の原因のひとつ、「インサイトの誤解」です。

Text: Kumiko Ohashi

  • 大橋久美子/J・ウォルター・トンプソン・ジャパン 戦略プランニング本部長。東京大学文学部社会学科卒、博報堂マーケティング局、研究開発局を経て、2003年J・ウォルター・トンプソン・ジャパンに入社。広告業界で25年、アジアや日本の女性たちと向き合いながら、女性たちを輝かせるためのブランディングを行う。

    ※当該記事の内容は個人的な見解であり、会社の見解を反映するものではありません

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