無意識でもなければ意図したわけでもない第三の炎上パターン
記憶に新しい炎上といえば、「あたしおかあさんだから」でしょう。“やりたいことを犠牲にしているけれども、母親になれた方がずっと嬉しいから我慢できる”。大人気のうたのおにいさんが歌いあげるこの歌は、献身的な母親を賛美しているとして好意的に受け取った人も多いケースでした。しかし、「自己犠牲・ワンオペ育児の容認・押し付け」である、「独身女性をお気楽・お遊びOLとして描きバカにしている」などとも受け取られ、ネット上で大炎上しました。
お母さんの気持ちを表面的にしか理解していないという批判に対し、作詞した人気の絵本作家の方は「おかあさんたちってこうなんでしょって想像で決め付けて書いてることは、ひとつもないよ 取材して書いてるので」と反論。お母さんを勇気付けるメッセージになると信じて作った自信作であったことが伺えます。
つまり、この炎上は、前回テーマにした「無意識」や「意図した悪ノリ」とは違う、「良かれと思ってたのに炎上」したケースです。実は、最近炎上型広告で目に付くのはこのタイプ。なぜ、きちんと当人たちの声をリサーチして作ったはずのものが、出来上がった途端に炎上するような結果に陥るのでしょうか? その理由に「インサイトの誤解」があります。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=G6u10YPk_34
(↑男女格差の改善をアピールしたはずが、「嫌い(dislike)」が「いいね(like)」を上回ってしまった「アウディ」の広告)
Text: Kumiko Ohashi
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大橋久美子/J・ウォルター・トンプソン・ジャパン 戦略プランニング本部長。東京大学文学部社会学科卒、博報堂マーケティング局、研究開発局を経て、2003年J・ウォルター・トンプソン・ジャパンに入社。広告業界で25年、アジアや日本の女性たちと向き合いながら、女性たちを輝かせるためのブランディングを行う。
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