特集 2017/8/7(月)
NYポップアートをかじってみよう!

5分でロイ・リキテンスタインを語れる5つのプロファイル

アンディ・ウォーホルとならぶポップアート界のもうひとりのアイコン、ロイ・リキテンスタイン。「誰?」「漫画っぽい感じのアートだったような……。」くらいしか知らなくても、これを読めば5分で知った気に! プラダ美術館で公式ガイドも務める“サラワカ”こと若柳サラさんがリキテンスタインを語るために必要な5つのプロファイルを解説。

※写真は「takka takka」とは別の作品

リキテンスタインが描く

プロファイルその5:アメリカの戦争と暴力性をストレートに訴える
 

彼の作品にはヒーローやミッキーマウス、典型的な金髪美女などを題材にすることが多く、第二次世界大戦に参加した経験から、戦闘シーンや戦車などがしばし登場することも特徴だ。コミックをアートに昇華させたと言っても、それはただ漫画の延長線上にあり、彼の作品は観客に訴えかけるものがなく、何かを考えさせるような深みが無いと言えるかもしれない。そんな意見をもつ人には、擬音語の「takka takka」という題名がつけられた、マシンガンが描かれている作品を是非見てもらいたい。この作品には戦闘員や死体などの強烈な姿は描かれていないが、言葉の暴力や攻撃性が表現されている。カラフルでコミカルでありながら挑発的に、作品内で繰り広げられる「アクション」を通して、作品は私たち観客を「攻撃」する。リキテンスタインはポップアートという媒体を介して、戦争などのリアルなストーリーを、言葉の暴力や擬音語という「ノンフィクション」な手法で描いたアーティストだと言える。

当たり前かもしれないが、アンディ・ウォーホルにせよロイ・リキテンスタインにせよ、ポップアーティストには個々のスタイルがしっかりと確立しており、表現の仕方も多種多様だ。リキテンスタインにとってコミックとは、これまで学んできたアートを含むハイカルチャーとポピュラーカルチャーの中間点に位置していたのかもしれない。彼のスタイルは一貫していて、ゴッホやピカソなどをはじめとするアーティストの作品も、自身のスタイルで描き続けた。それは、自分のスタイルに自信をもっていたことの象徴であり、そのスタイルを変える必要性を、彼自身が生涯を通じて感じなかったからなのかもしれない。

5 / 5
1 2 3 4 5

Text: Wakapedia

  • 若柳サラ/ エディター、クリエイター。ミラノ生まれ、ミラノ育ち。ミラノ大学 Comunication in arts marketing学科卒。パリ第三大学ソルボンヌ・ヌーベルMédiation Culturelle de l'Art修了。日伊英仏の国際的クリエイターが共同で発信する、アート&ファッションメディア「Wakapedia」主宰。『ロフィシエル イタリア』のコントリビューティング・エディターやプラダ財団公式日本語ガイドも務める。パオロ・ソレンティーノ監督に請われてアカデミー外国語賞受賞作『グレート・ビューティー/追憶のローマ』にカメオ出演もするなど現地では“サラワカ”としてマルチな才能を発揮している。

SHARE THIS ARTICLES

前の記事へ特集一覧へ次の記事へ

CONNECT WITH ELLE

エル・メール(無料)

メールアドレスを入力してください

ご登録ありがとうございました。

ELLE CLUB

ようこそゲストさん

ELLE CLUB

ようこそゲストさん
ログアウト