特集 2017/8/7(月)
NYポップアートをかじってみよう!

5分でロイ・リキテンスタインを語れる5つのプロファイル

アンディ・ウォーホルとならぶポップアート界のもうひとりのアイコン、ロイ・リキテンスタイン。「誰?」「漫画っぽい感じのアートだったような……。」くらいしか知らなくても、これを読めば5分で知った気に! プラダ美術館で公式ガイドも務める“サラワカ”こと若柳サラさんがリキテンスタインを語るために必要な5つのプロファイルを解説。

ステレオタイプの壁

プロファイルその4:ステレオタイプを利用するのや~めた!
 
原色を好み、太めのラインにドットを用いたことで、コミックの要素がそのまま拡大されたようなイメージが特徴的なリキテンスタインの代表的な作品たち。それまでアート作品とは、見る側が想像力を働かせて隠れた意味やメッセージ「読み取ってくれる」ことを前提に、疑問を投げかけたり感情に訴えかけるものが一般的。でもそれは裏を返せば、人々が描かれている対象に抱いているステレオタイプを利用しているということ。アートに欠かせないそんな「偏見」や「思い込み」とも呼べる要素をひっくり返したのが、リキテンスタインだ。彼の作品には文章や擬音語、セリフまでもがストレートに発信されており、被写体の言葉や状況が、コミックの吹き出しのようにそのまま描写されている。

「M-Maybe」(1965)。「た、多分、彼は病気になって家から出られないのね」という台詞とともに女性が描かれた作品。背景の街、着ている服などから都会であることも、彼を待っている状況も万人が理解できる。

「モナリザ」など、これまでの名だたる歴史的アーティストが手がけてきた女性の肖像画は、人物が置かれている状況や、被写体の思考の中などはミステリーに包まれることが多く、それがまた一層神秘さを放っていたとも言える。ところがリキテンスタインの女性肖像画は、1965年に発表された「M-Maybe」(写真)のように被写体にセリフを付けたり、どこで誰が何をしているかというヒントを、観客へ直接的に与え、見る側の想像の余地をきわめて狭めるという斬新な手法を積極的に取り入れた。こうしてポピュラー・カルチャーであるコミックをアートへと昇華させた最初のアーティストとなった。

4 / 5
1 2 3 4 5

Text: Wakapedia

  • 若柳サラ/ エディター、クリエイター。ミラノ生まれ、ミラノ育ち。ミラノ大学 Comunication in arts marketing学科卒。パリ第三大学ソルボンヌ・ヌーベルMédiation Culturelle de l'Art修了。日伊英仏の国際的クリエイターが共同で発信する、アート&ファッションメディア「Wakapedia」主宰。『ロフィシエル イタリア』のコントリビューティング・エディターやプラダ財団公式日本語ガイドも務める。パオロ・ソレンティーノ監督に請われてアカデミー外国語賞受賞作『グレート・ビューティー/追憶のローマ』にカメオ出演もするなど現地では“サラワカ”としてマルチな才能を発揮している。

SHARE THIS ARTICLES

前の記事へ特集一覧へ次の記事へ

CONNECT WITH ELLE

エル・メール(無料)

メールアドレスを入力してください

ご登録ありがとうございました。

ELLE CLUB

ようこそゲストさん

ELLE CLUB

ようこそゲストさん
ログアウト