AIDSをめぐる言葉の戦場──なぜ先進国で日本だけがAIDS禍を克服できないのか
2018/03/27(火)
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「アクトアップ」のスローガンは“Silence=Death(沈黙は死)”。90年代からニューヨークやパリにてこのポスターを掲げた運動が行われている。 Photo: Getty

「いきなりAIDS」が多い日本

先進国のなかで唯一いまもHIVの新規感染者やAIDS発症者が減らない国があります。日本です。

年間の新規感染判明者はいまや15年前の1.6倍の1500人ほどですし、新規発症者も同1.4倍の450人ほど。しかもこの新規発症者の大半は、感染がわかったときにはすでにAIDSも発症してしまっているという、いわゆる「いきなりAIDS」の人たちなのです。

その数は新規感染判明者中の3割を占めます。この3割の人たちはもっと早くHIV抗体検査を受けて感染に対処していればAIDSを発症せずに済んでいたかもしれません。つまりそれはまた、1500人ほどの新規感染判明者の向こう側に、HIVに感染しているのに検査をしていないので自分が感染していることを知らない人たちが、かなりの数で潜在しているということでもあります。

text: Yuji Kitamaru

  • 北丸雄二/ジャーナリスト、コラムニスト、小説家、翻訳家。NY支局長として在籍した東京新聞(中日新聞)を退社後、独立。TBSやFM TOKYO、大阪MBSなどでラジオ・コメンテーターやニュース解説者としても出演。NYに住んで24年、90年代にはNYの「アクトアップ」の動向を間近で目撃。2018年からは東京を拠点に活動中。Twitter: @quitamarco

  • (C)Celine Nieszawerline

    『BPM ビート・パー・ミニット』 ロバン・カンピヨ監督
    舞台は1990年代初めのパリ。エイズの治療はまだ発展途上で、誤った知識や偏見をもたれていた。「アクトアップ・パリ」のメンバーたちは、新薬の研究成果を出し渋る製薬会社への襲撃や高校の教室に侵入し、コンドームの使用を訴えたり、ゲイ・プライド・パレードへ参加するなどの活動を通し、AIDS患者やHIV感染者への差別や不当な扱いに対して抗議活動を行っていた。行動派のメンバーであるショーンは、HIV陰性だが活動に参加し始めたナタンと恋に落ちる。しかし、徐々にショーンはエイズの症状が顕在化し、次第に「アクトアップ」のリーダー・チボーやメンバーたちに対して批判的な態度を取り始めていく。そんなショーンをナタンは献身的に介護するが…。2018年3月24日(土)よりヒューマントラスシネ有楽町、新宿武蔵野館、ユーロスペースほか全国ロードショー。
    http://bpm-movie.jp/

  • 「アクトアップ(ACT UP)」とは?
    正式名称:the AIDS Coalition to Unleash Power=力を解き放つためのエイズ連合
    「アクトアップ・ニューヨーク」は1987年3月にニューヨークで発足したエイズ・アクティビストの団体。エイズ政策に感染者の声を反映させることに力を入れ、差別や不当な扱いに抗議して、政府、製薬会社などに対しデモなどの直接行動に訴えることもしばしばある。現在は全米各地やフランス、インド、ネパールなどにもアクトアップが作られている。

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