ELLE MEN
2016/04/27(水)
『世界から猫が消えたなら』公開記念

佐藤健×川村元気スペシャル対談! “戦友”の二人が語る、映画『せか猫』

『告白』『悪人』『モテキ』などを手がけた映画プロデューサー川村元気の初小説で120万部を突破したベストセラー『世界から猫が消えたなら』(『せか猫』)が映画となって、このほど公開! 『エル・ジャポン』2016年6月号にも揃って登場してくれた主演の佐藤健と原作者の川村元気が語り合う、出会いと現在、そして未来まで。

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愛猫の「キャベツ」を抱えた雨のシーンより。©2016 映画『世界から猫が消えたなら』製作委員会

恐怖を抱きながら仕事をしているからこそ信頼できる、佐藤健の役作り

――『せか猫』に観る、佐藤健の勝負どころは?
 
佐藤 そもそも『世界から猫が消えたなら』は世代によって受け取り方がぜんぜん違う映画だと思っていて、テーマの一つでもある親の死なども、僕はほとんど考えたことがなくて。上の世代の永井監督とかが「あそこが山場でしょ」って言い切っていた母親との最後のシーンも、当初はまったく泣くつもりがなくて、むしろ僕が山場だと思ったのは別のシーンだったりしたんです。だから、どうやって演じたらいいのか、芝居のプランニングとしては難しかったです。そこから、山場で感情的になれる状態に自分をもっていく作業に入りました。迷っているより、乗っかるしかないと思いました。
 
川村 感動したのは、その母親とのシーンが、芝居じゃなく思えたことなんです。観客を泣かせようとしてる感じが一切なくて、健くんが母親役の原田美枝子さんに、自分のお母さんを重ねてるんじゃないかなって。まるでドキュメンタリーのように、本当の親子に見えたんだよね。僕はどこか物語と現実が混じり合う瞬間を見ると、感動してしまうんです。作り物だけじゃなくて、本物の人生がそこに垣間見えるというか。
 
佐藤 一度、実家に帰りました。猫もいるし、そのときに主人公の目線で自分の母親を見たりして。でも、実際に現場に入ったら母親役の原田さんもすごく素敵で、2人の母親を思い浮かべながらやりました。ただ、撮影まではかなり不安で、現場に行く車の中でもキャメロン・ディアスの『私の中のあなた』とか、家族モノの映画とかをずっと見ていて。そうしたら、1テイク目は緊張もしていたのでぜんぜんできなくて、ふーってなって、だめだなと思っていたら、監督が泣きながら近づいてきて「どうする? 一応、もう一回やる?」って聞いてきて。「もちろん、やらせてください」って言いましたが、監督が感動してくれたこともあり、2回目は自然と気持ちが入りました。
 
川村 今の話を聞いて、合点がいきました。本人が2テイク目で気持ちが入って、なおかつ、芝居なのか本当の自分なのかわからない状態で母親を思うことで、撮れたシーンなんだなと。それにしても俳優って、いろいろな意味で、生きてきた人生がバレちゃう仕事だよね。
 
佐藤 本当にバレますよね。怖いんだよな。
 
川村 健くんがたいしたもんだなと思うのは、撮影前に実家に帰って母親と会って、猫に触れ合って……って簡単に言うけど、意外とやらないものだと思うんです。何年か俳優をやってたら、感情のスイッチのオンオフができるようになるから、「泣けばいいんでしょ」って、ポロポロと涙を流すことなんて簡単なんですよ。でも、それをやっても人の心は動かせない。ものを作るって、「渡ったら、壊れちゃうかな」っていう橋をぎりぎり渡るってことだと思うんですけど、実はその前にさんざん考えてるっていうのが、すごく大事だと思います。
 
佐藤 やっぱり、単純に怖いんですよ。準備しとかないとできないし、したとしてもできない。考えつくことを全部やりたいし、やっておきたい。どの現場も恐怖心しかないです。いまだに俳優の学校があったら入って勉強したいと思っているくらいなんです。
 
川村 僕も小説を書くときは、最低でも100人以上に会って取材しないと、ちゃんと書けないんじゃないかっていう恐怖がある。僕が佐藤健を信頼しているのは、きっと同じような恐怖心を持っているからなんだと、今日改めて話をして、よくわかりました。

  • ©2016 映画『世界から猫が消えたなら』製作委員会

    『世界から猫が消えたなら』
    原作は2012年に発表され、120万部突破の川村元気による同名のベストセラー。余命わずかの30歳郵便配達員の「僕」の前に、自分と同じ姿をした「悪魔」が現れる。大切なものを一つ消すこととひきかえに一日の命がもらえるとしたら……。佐藤健が「僕」と「悪魔」の一人二役に挑戦、共演に宮﨑あおいほか。監督に数々のCMで広告賞を受賞し長編映画デビュー作『ジャッジ!』が高い評価を受けた永井聡、音楽に小林武史、撮影に中島哲也監督作品で手腕をふるう阿藤正一、脚本に次々と傑作を生み出す岡田惠和など、日本屈指のクリエイターが作り上げた涙だけでなくセンスにも溢れた秀作。
     
    2016年5月14日(土)より、全国東宝系公開。
    http://www.sekaneko.com/

Photo : Saskia Lawaks Styling:Hidero Nakagane/ S-14(Takeru Satoh) Hair & Makeup:Nobu Fujiwara Interview & Text:Yuka Okada

  • 佐藤健/1989年生まれ。埼玉県出身。2006年デビュー。主な出演映画に『ROOKIES-卒業』(09)、『劇場版TRICK霊能力者バトルロワイヤル』(10)、『るろうに剣心』(12)、『カノジョは噓を愛しすぎてる』(13)、『るろうに剣心 京都大火編 / 伝説の最期編』(14)、『バクマン。』(15)、出演ドラマに『龍馬伝』(10)、『とんび』(13)、『天皇の料理番』(15)。16年は『世界から猫が消えたなら』に続き、主演作『何者』が10月15日に全国東宝系で公開予定。
     
    川村元気/1979年生まれ。横浜市出身。映画プロデューサーとして『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『バクマン。』などの映画を製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、翌11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。12年に、初小説『世界から猫が消えたなら』を発表し、同作はミリオンセラーとなる。翌年、絵本『ティニー ふうせんいぬのものがたり』を発表し、同作はNHKでアニメ化され現在放送中。14年には、絵本『ムーム』を発表。同作は、Robert Kondo&Dice Tsutsumi監督によりアニメ映画化された。その他の著書として、宮崎駿・糸井重里・坂本龍一ら12人との対話集『仕事。』、2作連続の本屋大賞ノミネートを受けた小説第2作『億男』、近著として養老孟司、若田光一、川上量生、佐藤雅彦、伊藤穣一ら理系人との対話集『理系に学ぶ。』、ハリウッドの巨匠達との空想企画会議本『超企画会議』などがある。

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