―柳楽さんと一緒のシーンは最初くらいですよね。兄弟感を出すために何か意識したことはありますか。
 
いや、最初に脚本を渡されて、読み終わった時に、２人の間に言葉はなくても将太は実際兄のことを尊敬しているし憧れている。「こいつらは芯の部分で繋がっている兄弟だ」って思ったので、その通りやればいいと思いました。ただ、台本を見ただけで、「すごい映画になるな」とはわかったんですが、どんな映画になるかは想像ができないかった。松山に触れたことがなかったからかもしれません。実は行ったこと、あったんですけど、あんまり覚えてなくて。でも、映画の撮影らしく、数週間、そこにいて、みんなで暮らして、生きて、ぶつかって……。そうしたことが映らないと映画って完成しないし、それがすごく映画らしい。そこの土地土地で、匂いもするし、そこの音がある。方言もそうですけど、声や音は大事だと思うんです。兄弟としては、あんまり意識はしていないです。しないっていうよりかはなんか、どっか似るだろうなって思っていましたし……いや、似る、どうこうより、兄弟であればいいんです。
 
―柳楽さんとはデビュー作が主演で、その作品がいきなりカンヌに出品されるなど、共通点がありますが、そういった話はしましたか。
 
ほぼ、「初めまして」と会ったのが現場だったんです。しかも、唯一絡む、最初のシーンでは交わす台詞もほとんど、ない。おまけに、お互い対岸にいて、距離的にも遠い。柳楽さんと僕がちゃんと話したのは撮影が終わってからですね。最初はどういう人なのか、わからなかった。柳楽さんは普段は喋るんですけど、現場では静かな人なんです。あんまり話さず、会って、５，６回目の夜の食事の席で、「カンヌはどうこう」という話はしました。「やっと、してくれた」と思いました。
 
―ずっと、話したかったんですか。
 
やっぱり、どう思ってるんだろうというのは気になるじゃないですか。
 
―なんて、言われたんですか。
 
実は愛情がすごい方なので、そういう時って急に言葉が荒くなるんですよ。認めるというようなニュアンスのことを言ってくれていたと思います。柳楽さんは、ウソでも「好きなんだよ～」とかは言わない人だと思う。でも、そう言ってくれた。なぜかわからないけど、最初、すごく怒られたんです。きっと、思い入れを持ってくれていたんだと思います。かっこいい兄貴のような存在です。