―暴力がさく裂する『ディストラクション・ベイビーズ』ですが、唯一、静かな男の子の役でした。
 
なんていうか、すごく特色のない役なんですが、でも実は観客の目線にもなり得る役なんですよね。メイン・ストリームの3人（柳楽・菅田将暉・小松菜奈）が暴れているなかで、そこには触れられないような気がして、狭い世界に生きているんだなと感じてしまう役。別に将太はおとなしいわけではなくて、喧嘩する機会がなかった。兄貴とは何か通じるものがあり、純粋にただ、喧嘩したいという彼の思いも理解していると思います。
 
―どういうことを思い、演じていましたか。
 
実は今日、映画を観直して、気づいたことがあるんです。これまでは初号試写で一度見ただけでは自分のことが気になってしまって、客観視できなかったんです。作品を観直したら、いちばん映画のなかでヘボい……つまり、やるせないし、不甲斐ない将太なんですが、最後の最後、周りの人に巻き込まれて、一瞬、何か違う覚悟を決めていくのが見えたんです。虹郎ではなく、将太として見えた。「あ、顔が変わっているな」というのがわかるし、今後、どうなっていくのかがいちばん、将太にかかっている。その構図が面白いなと思いました。
 
―確かに顔つきが違っていました。
 
監督にとって、すごく思い入れのある役だったらしくて、インする前に、顔合わせとはまた別に「ちょっとお茶、行こう」みたいなかんじで、「この役はね」ってすごく語ってくれたんです。内容はあんまり、覚えてないんですが（笑）。最初は僕の役の目線でのナレーションがたくさんあって、実はもっともっと説明的な映画だったんです。上がりではだいぶ削られていた。もちろん、それはアフレコの時点でわかったんですけど、いまの方が断然、映画っぽいですね。この映画ってすごくたくさん、バックショットがあるんです。いちばん多いのはやっぱり柳楽さん、次に僕の芦原兄弟なんです。バックショットがある役とない役では、大きな違いがあって、真利子監督的にたぶん、感情移入はできなくても、何かしらの目線にしたいということなんだと思います。物語を語られる側にしたいんじゃないか。今日、改めてそう感じました。