基本スタンスは「待つ」「見守る」

―まずは、社会においての「大吉さん的リスク回避法」、基本のキを教えてください！

博多大吉（以下、大吉。敬称略）：基本「待つ」なんです。“沈黙は金”っていうじゃないですか。いちばん何もしないことが、いちばん何も起きないんです。最大のリスクヘッジはそれです。上司だってヒマじゃないんです。

―ではたとえば、上司から失敗を押し付けられそうになったりした場合はどうやって防げばいいのでしょう？

大吉：変に除けようとすると傷が深くなるんです。なので全部請け負ってしまうほうがいい。たとえば文化祭でゴミがいっぱいくるんで、僕が気合入れて焼いてたら“（焼却炉の）魔術師”って言われるようになったんですけど（笑）。

―焼くのを断るっていう選択肢はなかったんですか？

大吉：みなさんが思っている以上に、学校で火を扱うっていうのは花形なんですよ（笑）。だんじりで言うと、上に乗ってるみたいな。周りにも触らせません。もう鍋奉行みたいなもんです。そうすると、楽しくなってくるんです。これはゴミの話ですけど、押し付けられて「おいしい」って思うくらいじゃないとダメです。

―その「焼却炉の魔術師」と呼ばれていた時代に培った自己防衛法はありますか？

大吉：実はですね……「焼却炉の魔術師」も「捕虜」というアダ名も、呼ばれて全然嫌じゃなかったんです（笑）。むしろ「うまい」って思います。

―職場で変なアダ名をつけられたら終わりじゃないですか……。

大吉：そこも変に動くとダメなんです。とにかく待つ。

―それでは、どうしても苦手な上司、先輩との付き合い方はどうしたら？

大吉：これも僕の基本姿勢なんですが“嫌われるくらいなら無視されたほうがいい”。嫌いっていう感情が相手にバレると変なことになるので、近寄らず、存在を消します。

そもそも、こっちが嫌ってるときは、だいたい向こうもこちらを嫌いになります。だから近寄ってこないはず。それでも近寄ってくるときは、「聞こえないふりする」「見てなかったふりする」で凌ぎますね。僕は毎日同じオフィスに通うような仕事ではないので、いっそのこと視界から消えるということもできますので、これは有効的です。あと、「電話に出ない」。携帯だからって出ると思ったら大間違いですよ！　なんで出なきゃならないんだ？って思いますよ。あとで「なんで電話出なかったんだ？」って聞かれたら「仕事中だったんで」と言いつつ、それが回数重ねると、相手もなにかに気づいて電話してこなくなります。だいたい、SNSも見たことを知られるものが苦手ですね。その点、TwitterはLINEの既読みたいに、見たことが相手にわからないので、気がラクです。

―そこまで避けていたら会社で孤立するような気がしますが……。

大吉：でもね……実は会社で成功している人、つまり出世している人に悪い人っていないんですよ。これはどの世界にも言えると思うんですが、ある程度出世している人、芸人の世界でいうと売れている人に、嫌な人っていないんです。本当に嫌な人は売れない。これは僕が芸人になって30年近くで得た実感です。だから「一度懐に入ってみる」というのもあります。たとえば面と向かって誘われたらもう腹くくって行くしかない。で、行ったら行ったで実は楽しいんですよ。

ピラミッドでいうと、今TVで活躍しているのはその上の一角なんです。そのピラミッドの上ではみんなテラスでお茶飲んでるような感じで（笑）、その下はぐちゃぐちゃしている。だから、実は気をつけるべきは上司よりも同僚です。

―では今年で44歳になる大吉さんが、先輩として「後輩にこういう行動取られたら嫌だな」っていうことってありますか？　

大吉：誘ったときに断る理由として「◎◎先輩に誘われたので……」と具体的な名前を出して言われると萎えますね。それが単純に先約という順番の差だとしても「……声弾んでんな」とか軽く落ち込みます。だから、上司の誘いを断るときは他の具体的な名前は絶対に出さないほうがいいですね。

―先ほど同僚に気をつけろ！という発言がありましたが、苦手な同僚がいたらどう扱えばいいでしょうか。
 
大吉：「見守る」ですかね。社会人デビューとかして、はしゃいでる人は、よっぽど意を決してやられてるんでしょうから。見守るのがいちばんでしょう。きっとどっかで失敗するでしょう。そのときに「ね？」って言いに行けばいい。

―そういう社会人デビューの人に巻き込まれない方法は？

大吉：オフィスで逃げられない状況だとして……思い切って飛び込むっていうのは？意外とどんな人もいざ懐に入ってしまえば、そんなに嫌じゃない。