「好きな監督はハネケ。カンヌでの受賞は予想外でした。」
――『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は、リューベン・オストルンド監督にとって『プレイ』(11)、『フレンチアルプスで起きたこと』、に続いて3度目のカンヌ国際映画祭での上映。前作との現地での反応の違いは?
『フレンチアルプスで起きたこと』は作品の評判が下から突き上げられてゆくような感覚があり、人生で最高の出来事だったので『こんな経験はもう出来ないだろう』と感じていました。そんなこともあって『ザ・スクエア』がコンペに選ばれた時は、前回のようなことは無いだろうと思っていたのですが上映後の反応が良かった。それで欲が出たのか賞が欲しくなってしまったんです(笑)ただ、自分が受賞するとしても、『最高でも監督賞』と思っていたのですが、授賞式での発表が始まっても、なかなか自分たちの作品名が呼ばれない。最後に最高賞のパルム・ドールの発表が残された時点で『これはないな』と思っていたので、受賞にはとても驚きました。
――監督はスウェーデン出身で1974年生まれ。歴代の受賞監督としては、どちらかというと若い部類に入りますよね。
素晴らしい監督はたくさんいます。でも、その多くはパルム・ドールを受賞していませんから、私はラッキーですね。審査委員長だったペドロ・アルモドヴァルとは、授賞式の後で少しだけ話をしました。審査員だったウィル・スミスやジェシカ・チャステインとたくさん話すことができたのはいい思い出です。
――映画学校で映画を学んだと言うオストルンド監督。影響を受けた映画人は?
ミヒャエル・ハネケです。彼のユニークなアプローチや慈悲の無さ、それでいてシーンを作り出す時の繊細さや丁寧さに触発されました。ロイ・アンダーソンやアキ・カウリスマキにも影響を受けましたが、彼らに比べてハネケにはユーモアがないですよね。私にはその両方があるのかもしれません。
text: Takeo Matsuzaki Photo: © 2017 Plattform Produktion AB / Société Parisienne de Production /Essential Filmproduktion GmbH / Coproduction Office ApS, Aflo, Getty Images
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松崎健夫(まつざき・たけお)
映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。
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『ザ・スクエア 思いやりの聖域』
監督・脚本:リューベン・オストルンド
出演:クレス・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウェスト、テリー・ノタリー他
配給:トランスフォーマー
4月28日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマ、立川シネマシティ他 全国順次公開
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