ゴールデングローブ賞の結果で占う! 第90回アカデミー賞大胆予想
2018/01/16(火)
> <

1/5

『スリー・ビルボード』

 アメリカのミズーリ州の片田舎が舞台。映画は、さびれた道路沿いに設置された巨大な3つの広告看板(ビルボード)に、ある抗議のメッセージが掲げられたことから始まる。それは、7ヶ月前に無残な状態で娘を殺された母親が、警察の捜査が進まず、事件が風化しつつあることに対して投げかけた怒りのメッセージだった。事件の解決を望む母親の執念は、やがて新たな<暴力>や<死>を小さな町で引き起こすこととなる。

 既にヴェネチア国際映画祭で脚本賞を受賞しているこの作品は、ゴールデングローブ賞のドラマ部門で作品賞・主演女優賞、脚本賞・助演男優賞の4部門を受賞。全米で僅か4スクリーンの上映で始まり、現在1620スクリーンにまで上映が拡大した。そのことからも、現在アメリカでこの映画が注目を浴びている作品であるということが窺える。

 監督のマーティン・マクドナーは、日本未公開ながらカルト的人気を誇る『ヒットマンズ・レクイエム』(08)で注目を浴びた人物。『スリー・ビルボード』では、何かを<赦す>ことと、何かに<感謝>することで、<諍い>が完全になくなりはしないまでも、<緩和>するのではないか?と描いている。このことは、トランプ政権以降のアメリカ社会における<不寛容>のありかたを、小さな田舎町で起こる<諍い>に置き換え、そして“社会の縮図”として凝縮しながら痛烈に風刺してみせているのである。

 母親を演じたフランシス・マクドーマンドは、既に『ファーゴ』(96)でアカデミー主演女優賞に輝いているが、本作の演技でも候補となることは必至。また少女の母親と衝突する警官を演じたサム・ロックウェルは、先行きの読めない物語を牽引してゆく重要な役どころで、ゴールデングローブ賞の助演男優賞に輝いている。同時に、署長役のウディ・ハレルソンや元夫役のジョン・ホークスなど、脇を固める役者陣の演技にも注目の作品だ。

【2018年2月1日公開】

text: Takeo Matsuzaki photo: AFLO, GETTY IMAGES

  • 松崎健夫(まつざき・たけお)
    映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。

MORE TOPICS

SHARE THIS ARTICLES

前の記事へセレブコラム一覧へ次の記事へ

CONNECT WITH ELLE

エル・メール(無料)

メールアドレスを入力してください

ご登録ありがとうございました。

ELLE CLUB

ようこそゲストさん

ELLE CLUB

ようこそゲストさん
ログアウト