「男と女の都合って違うよね」
『お葬式』
伊丹十三監督の初期の作品、『お葬式』とか『タンポポ』とかは、エロいですね。セックスとか恋愛の話になると男と女ってズレるよね、っていうことがよくわかる。たとえば『お葬式』では妻がお葬式を出すために必死に働いている最中に、夫は愛人と(喪服のまま)やっちゃう。グルメを描いた映画だと男でも女でも「おいしそう」って思うじゃないですか。でも恋愛とかセックスがテーマで、真実をえぐり出そうとすると、そこに男女の都合の違いが出てしまう。
お葬式の最中に、それを放り出して愛人とセックスしちゃうっていうのは、やっちゃいけないことなんだと思いながらやるっていうのが男のファンタジー。いっぽうで浮気されてる奥さんからしたらそれはとんでもない話で、だけど愛人側に感情移入したらすごく楽しかったり(笑)。そんなことを考えながら観ると味わい深いかもしれない。男と女のすれ違い、これは永遠のテーマですね。いまのハリウッド映画ってすごくよくできていて、男からも女からも文句が出ないように描かれてるんだけど。
ちなみに『タンポポ』はラーメン屋を立て直す話なので色恋沙汰は描かれないんですけど、そのなかにすごくエロティックな描写があって。生卵をすするっていうね、フェティシズムなんです。ただただ映像が艶かしい。ご飯をおいしそうに食べることがエロティックだということ、とにかく食べ物をエロく撮ろうと伊丹十三さんが撮った映画だから、これも笑えてくる話ですよ。ただ、きれいな女の人がむしゃむしゃ食べてるところって、すごくエロいものです。
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『お葬式』
1984年
ブルーレイ ¥4,935 発売中
監督・脚本/伊丹十三
出演/山崎努、宮本信子、菅井きん
発売・販売元/東宝
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二村ヒトシ/アダルトビデオ監督。1964年・六本木生まれ。慶應大学文学部中退。1997年にAV監督デビュー。痴女もの、レズビアンものを中心に独創的な演出のアダルトビデオ作品を数多く手掛けるかたわら、「すべてはモテるためである」(イースト・プレス)、「恋とセックスで幸せになる秘密」(イースト・プレス)などの著書で、恋愛やモテについて鋭く分析。女性とセックスを知り尽くした見識に定評がある。
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