「マスターベーションは悪いことではない!」
『ヒステリア』
これはいわゆる“大人のおもちゃ”が、実は医療器具として、産業革命のころ(100年以上も昔)のイギリスで発明されていたという実話に基づいた映画です。その当時のヨーロッパでは、精神分析の分野で“女性が欲求不満である”ということがバレてしまった。で、真面目なお医者さんが有閑マダムの患者の股間を愛撫することで治療してたんだけど、治療のやりすぎで手が腱鞘炎になってしまって、困った末に電動の“おもちゃ”を開発したという(笑)。マスターベーションは悪いことではないんだっていうことを明るく、笑いながら確認できますよ。中身は普通の恋愛映画なので観やすいし、視点はフェミニズムだし、映画の終わり方もさすがイギリス映画っていう感じでユーモアがある。
女性にとってのマスターベーションって、社会一般からは文句は言われないけど、親とか付き合ってる男性とか、広く男性社会から変な目で見られたらどうしよう、っていう部分がありますよね。でも女性にはそこから自由になってほしい。女性のセックスしたい気持ちって男性に支配されちゃうじゃないですか。素敵な男性をゲットするために、セックスをエサとして使ってしまったり。愛情とか人肌はあったほうがいいから、セックスはしたほうがいいんですよ。ただ、変な男とやるぐらいなら自分でやったほうがいい、と言いたい。マスターベーションとセックスは使い分けてね。
自分がどういう妄想をしてマスターベーションをすると興奮するのか、を知ることは大事ですよ。親との関係とか、いま自分が抱えてることって絶対にセックスに反映されるので、自分がどういうセックスをしていて、したいのか、っていう欲望を知るのは男も女もすごく重要。自分を幸せにしない男に恋してしまう前に、自分で自分の体を愛してあげて、自分の欲望を知って、それで信頼できる男性に「こうされると気持ちいいんだ」って伝えればいい。恋人同士でも恥ずかしいのはいいんですよ、恥じらいがなくなったらよろしくないので。セックスの最中にはオープンにしたほうがいいと思うんだけど、そうじゃないところで100%オープンにすると、お互い魅力がなくなっていくこともあるから、それは難しいところですね、ケースバイケース。いずれにせよ、マスターベーションは悪いことではないんだっていうことです。
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『ヒステリア』
2011年
※DVD発売未定
監督/ターニャ・ウェクスラー
出演/ヒュー・ダンシー、マギー・ギレンホール
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二村ヒトシ/アダルトビデオ監督。1964年・六本木生まれ。慶應大学文学部中退。1997年にAV監督デビュー。痴女もの、レズビアンものを中心に独創的な演出のアダルトビデオ作品を数多く手掛けるかたわら、「すべてはモテるためである」(イースト・プレス)、「恋とセックスで幸せになる秘密」(イースト・プレス)などの著書で、恋愛やモテについて鋭く分析。女性とセックスを知り尽くした見識に定評がある。
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