「女と性が描かれた官能映画」
『ブラック・スワン』
これは『マジック・マイク』の逆で、女性が芸術をやるときに、女性性を売りものにしなければいけない、男性に媚びなければいけない、っていう部分が描かれています。男性の演出家に気に入られないとプリマになれないっていう厳しい話もありながら、女として美しく踊るということは、ひとりの男だけじゃなくて男性社会全体に媚びている、みたいなこと。で、踊っているうちに主演のナタリー・ポートマンがだんだんおかしくなってきて、白鳥がケダモノに襲われる幻想とかが現れてくるんですけど、そのあたりがすごくエロティックに描かれています。
これもテーマはセックスではないんですが、踊っている女性の体が美しいし、全体的に女性のマスターベーション的なものが描かれた映画ですね。あとは僕が書いた本の内容にもかぶってくるんですけど、母親が娘を抑圧する話が出てきたり。女性の性の問題を描いた、非常に官能的な女性映画です。
『ナインハーフ』みたいに、わかりやすく男女の絡みがエロいとか、そういう映画はたくさんあると思うんですけど、そういうことじゃなくて。単純な男女のセックスとか恋愛ではなく、女と性が描かれていて女性が観てもドキっとするような官能的なシーンがある。逆に男が観たら怖くなっちゃうかも。僕はエロいと思ったんですけどね。エロいというか、女性にとってヤバい話が描かれているなと。
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『ブラック・スワン』
2010年
DVD ¥1,490 発売中
監督/ダーレン・アロノフスキー
出演/ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス
発売・販売元/20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン
問い合わせ先/20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン
http://video.foxjapan.com/
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二村ヒトシ/アダルトビデオ監督。1964年・六本木生まれ。慶應大学文学部中退。1997年にAV監督デビュー。痴女もの、レズビアンものを中心に独創的な演出のアダルトビデオ作品を数多く手掛けるかたわら、「すべてはモテるためである」(イースト・プレス)、「恋とセックスで幸せになる秘密」(イースト・プレス)などの著書で、恋愛やモテについて鋭く分析。女性とセックスを知り尽くした見識に定評がある。
http://nimurahitoshi.net/