2016年の私的お気に入り映画を紹介!
――最後に、エルの30本には漏れてしまったけれど、お二人の個人的な一押しを教えてください。
山内:ユペールのところでも言いましたが、『アスファルト』。かわいらしくて、幸せな気分になれます。日常の奇跡を感じられるというか。これも団地映画で、3組の住人のオムニバスなんですが、どのエピソードもキュンときますよ。ユペールと仲良くなる少年のジュール・ベンシェトリがすっごくかわいいんです。監督の息子で、『男と女』のジャン=ルイ・トランティニャンの孫。トランティニャンの遺伝子がすごいな。これ以上の輝きを今後、発揮することはないんじゃないかな、と思うくらい美しい。
山崎:私はアメリカの学園ものが好きなので、『DOPE/ドープ!!』。黒い『フェリスはある朝突然に』と呼ばれるコメディです。荒れた地域に住む高校生たちの話で、バンドをやりつつハーバードを目指しているような優秀な子が、いきがかり上、ヤクをさばかないといけなくなっちゃう。いろいろと新しい感じがするんですよ。もう1本、『ぼくとアールと彼女のさよなら』もおすすめ。パロディ映画ばかり撮っている高校生二人が、余命わずかな女の子のために映画を撮ることになるんです。映画愛もすごくあるし、悲恋ものにしないのがいい。この3人と『DOPE』の3人も、スピルバーグ作品をはじめみんな大作が決まっていて、次世代スター6人がそろい踏み。映画界の未来という意味でも大切だし、アメリカの青春映画のフォーマットの最先端をいく2本です。
Text: AYAKO ISHIZU
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山崎まどか/文筆家、翻訳家。映画、本、音楽などカルチャー全般に精通し、「乙女カルチャー」の第一人者。著書に『女子とニューヨーク』『オリーブ少女ライフ』『ヤング・アダルトU.S.A.』(共著)など。翻訳書に、タオ・リン『イー・イー・イー』、『ありがちな女じゃない』など。
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山内マリコ/作家。2008年に「女による女のためのR-18文学賞」で読者賞受賞。’12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。著書に『さみしくなったら名前を呼んで』『パリ行ったことないの』『かわいい結婚』など。最新刊は長編小説『あのこは貴族』。’13年の『アズミ・ハルコは行方不明』が映画化され現在公開中。