理由5:
登場人物たちの「多様性」が今っぽい
ワンダーウーマンを演じたガル・ガドットがイスラエル人であるように、国籍や人種、性別における<多様性>を描くことは、昨今の映画においても世界的な潮流だ。
映画版『ワンダーウーマン』では、彼女と行動を共にする仲間たちの国籍や人種にも<多様性>が表れている。このことは、一昔前のハリウッド映画では描かれることがなかったという点においても特筆すべきことだ。
偶然か必然か、現在公開中のマーベル作品『スパイダーマン:ホームカミング』(17)でも、主人公ピーターが好きなる同級生の女子が褐色の肌をしたアフリカ系アメリカ人だったり、彼の親友がサモア系の太っちょの男子だったりと、同様の<多様性>を指摘できる。
映画は時代を映す鏡として、その時々の時代背景や問題を作品の中に投影してきたが、アメコミ物と呼ばれる『ワンダーウーマン』のような大作映画にも説教臭くないレベルで反映されている。そこに、ハリウッド映画の懐の深さを感じずにはいられない。
text: Takeo Matsuzaki photo: AFLO, GETTY IMAGES
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『ワンダーウーマン』
女性だけが住むパラダイス島で生まれた“ワンダーウーマン”ことダイアナ(ガル・ガドット)は、アマゾン族のプリンセスとして育てられてきた。ある日、不時着したアメリカ人パイロットのスティーブ(クリス・パイン)を助けたことから、ダイアナは外の世界で大きな戦争が起きていることを知る。彼女は世界を救うためスティーブとともに故郷を後にし、禁断の外界で平和のために戦うのだが……。1941年に漫画のキャラクターとして誕生してから76年。初めての実写映画化となった『ワンダーウーマン』は、全世界で大ヒットを記録。また本作は、DCコミックのヒーローたちが活躍する連作<DCフィルムズ・ユニバース>の第3作としても製作されたという経緯がある。8月25日より、全国公開。 -
松崎健夫(まつざき・たけお)
映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。