理由2:
ガラスの天井を突き破った、女性監督の熱意
映画版『ワンダーウーマン』を監督したのはパティ・ジェンキンス。彼女の長編映画デビュー作『モンスター』(03)は、実在の女性連続殺人鬼アイリーン・ウォーノスの人生を描いた作品。シャーリーズ・セロンにアカデミー主演女優賞をもたらした作品でもある。
監督デビュー作で一躍名声を得たパティ・ジェンキンスだったが、映画製作のチャンスがなかなか得られず、監督2作目は『ワンダーウーマン』まで14年も待つことになった。
『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)でキャスリン・ビグロー監督が女性監督初のアカデミー監督賞に輝いた時、プレゼンターを務めたバーブラ・ストライザンドは、ハリウッドで女性監督が活動することの困難を訴えていた。ハリウッドの映画界は、未だ旧態然とした男性社会なのだ。
歌手として名声を得ただけでなく、女優としても『ファニーガール』(68)でアカデミー主演女優賞に輝いているバーブラ・ストライザンドは、女性監督として、早くからハリウッドにもの申してきたひとり。『スター誕生』(76)で製作総指揮を兼任したことを皮切りに、『愛のイエントル』(83)や『サウス・キャロライナ/愛と追憶の彼方』(91)などでは製作・監督・主演を兼任。アカデミー賞候補となるものの、監督賞候補としては無視されるなど辛酸を舐めてきたという歴史がある。
そんな女性監督の活躍が難しいハリウッドにおいて、パティ・ジェンキンス監督は本作で「製作費が1億ドルを超える作品を監督した初めての女性監督」となった。それだけではない、彼女は女性監督史上No.1の興行記録を打ち立てたのである。その数字は、公開初週のオープニング成績として『ドクター・ストレンジ』(16)の8505万ドルや『アイアンマン』(08)の9861万ドルを超える1億ドル超えを記録し、ハリウッドの映画業界に風穴をあけたのだ。
text: Takeo Matsuzaki photo: AFLO, GETTY IMAGES
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『ワンダーウーマン』
女性だけが住むパラダイス島で生まれた“ワンダーウーマン”ことダイアナ(ガル・ガドット)は、アマゾン族のプリンセスとして育てられてきた。ある日、不時着したアメリカ人パイロットのスティーブ(クリス・パイン)を助けたことから、ダイアナは外の世界で大きな戦争が起きていることを知る。彼女は世界を救うためスティーブとともに故郷を後にし、禁断の外界で平和のために戦うのだが……。1941年に漫画のキャラクターとして誕生してから76年。初めての実写映画化となった『ワンダーウーマン』は、全世界で大ヒットを記録。また本作は、DCコミックのヒーローたちが活躍する連作<DCフィルムズ・ユニバース>の第3作としても製作されたという経緯がある。8月25日より、全国公開。 -
松崎健夫(まつざき・たけお)
映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。