食通たちを魅了するダニエル・デルプシュにインタビュー!
1988年、女性として、初めてフランス大統領の専属料理人に指名されたダニエル・デルプシュ。彼女の人生を大きく変えた運命のときから25年。その半生を描いた映画『大統領の料理人』が公開される。来日したダニエルに、映画の裏側、そして自身の料理人人生について聞いた。
「大統領専属料理人時代のこと」 意地悪の仕返しに30年かかった!?
―映画には、エリゼ宮のシェフたちに主人公が意地悪をされるシーンも登場しますね。
「本当のことですよ。ちょっとは脚色されていますが。私は一度も怒ったことはありません。何の解決にもなりませんからね。だって、彼らの頭はものすごく硬かったから、どうしようもないんですもの(笑)」
―現在、女性料理人の地位は向上しているのでしょうか?
「今ではずいぶん進歩し、多くの女性が厨房に入っていますが、私が若かった頃は、厨房は男性社会でした。その仕返しに30年かかりましたが、この映画ができたことで溜飲が下がった気がします。いつかはこんな日が来るんですね。エリゼ宮にいた当のシェフたちは、全然喜んでいないと言う噂が入ってきましたけれど(笑)」
―それは痛快ですね(笑)
「どちらにしても、あのとき、喧嘩を仕掛けてきたのはあちら。女性は忍耐強くふるまうのが正しいのよ。この映画の公開を、女性料理人たちが喜んでくれ、女性が作る料理の価値が高められたと言ってくれたと聞き、嬉しく思っています。女性は昔から料理をしてきましたから、評価されるのは不思議でも何でもないんですが」
―栄光を追い求めがちな男性料理人に比べ、誰に料理を作るにしても謙虚に同じ気持ちでいられるのが女性、という印象も持ちます。
「女性は昔から、周りの人間の健康に必要な栄養を考え、元気にさせる役割を担ってきました。それを今も続けているわけです。男性は、自分たちができることを続けている。TVに出たり、料理コンペに出たり。男性は大好きだけど、そういった虚栄心には、ときどきうんざりしますね(笑)」
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『大統領の料理人』
<STORY>
取材のため、南極基地を訪れたオーストラリアのTVクルーは、現地で一人のフランス女性に遭遇する。彼女の名はオルタンス。男所帯の観測基地で、隊員たちのために料理を作る女性料理人だった。彼女は何者で、いったいなぜここにいるのか。隊員たちに慕われるオルタンスに興味を抱いたクルーが彼女の素顔に迫っていくと、やがてその驚くべき過去が明らかになっていく。実は彼女はミッテラン大統領の元専属料理人としてエリゼ宮で働いたという異色の経歴の持ち主だったのだ。オルタンスが覗いた大統領の素顔とは。そしてエリゼ宮の裏側とは。
監督/リクリスチャン・ヴァンサン
出演/カトリーヌ・フロ、ジャン・ドルメッソン、イポリット・ジラルド
配給/ギャガ
公式サイト/http://www.daitouryo-chef.gaga.ne.jp
2013年9月7日(土)シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマほかにて全国順次公開
Les Saveurs du Palais © 2012 –Armoda Films- Vendome Production – Wild Bunch – France 2 Cinema
Text JUNE MAKIGUCHI