食通たちを魅了するダニエル・デルプシュにインタビュー!
1988年、女性として、初めてフランス大統領の専属料理人に指名されたダニエル・デルプシュ。彼女の人生を大きく変えた運命のときから25年。その半生を描いた映画『大統領の料理人』が公開される。来日したダニエルに、映画の裏側、そして自身の料理人人生について聞いた。
「映画について」 半生の映画化は純粋な喜び
―『大統領の料理人』に出てくるお料理はどれも実に美味しそうでした。
「それも映画の大きな目的でしたからね。すべて美しく撮ってもらえて嬉しいわ。もちろん、すべて私のレシピです。私のレシピをリストアップして、どれを使うか提案しました」
―ご自身の人生が映画化されて、とても嬉しいとおっしゃっていましたが。
「純粋な喜びです。実は、撮影中はちょっと不安でしたが。主演のカトリーヌ・フロから、自分の人生が映画化されたものを受け入れるのは難しいかもしれないと言われていたんです。あなたの人生のひとつの解釈ですから、と」
―現場にはいきましたか?
「ええ、何度か。それに、週に2~3回はカトリーヌから報告の連絡が入りました。実は、若鶏のファルシが出てくるシーンで、こんなこともありました。制作サイドは二人のMOF(フランスの国家最優秀職人賞)の称号を持つシェフを雇い、料理を再現させたんですが、カトリーヌが言うには、立派なブレス産の若鶏がフォアグラやフライドパセリで豪華に美しく盛られ、三ツ星レストラン風になっていたそうです。私と一緒にこの料理を作ったことがある彼女は、“全然違う。ダニエルが見たら怒るわよ”“勝手なことをするなら私はもうやらない”と言ったとか。そこで、美術チームが、私のアドバイスを求めに来たんです。映画では、私のレシピ通りになっていますよ」
―撮影中もかなりアドバイスをされたのですね。
「私の意見がとても気になるようでした。特に、MOFのシェフが、私のように田舎で料理人をしている女性の意見を採り入れなければならなかったことは愉快でしたね(笑)」
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『大統領の料理人』
<STORY>
取材のため、南極基地を訪れたオーストラリアのTVクルーは、現地で一人のフランス女性に遭遇する。彼女の名はオルタンス。男所帯の観測基地で、隊員たちのために料理を作る女性料理人だった。彼女は何者で、いったいなぜここにいるのか。隊員たちに慕われるオルタンスに興味を抱いたクルーが彼女の素顔に迫っていくと、やがてその驚くべき過去が明らかになっていく。実は彼女はミッテラン大統領の元専属料理人としてエリゼ宮で働いたという異色の経歴の持ち主だったのだ。オルタンスが覗いた大統領の素顔とは。そしてエリゼ宮の裏側とは。
監督/リクリスチャン・ヴァンサン
出演/カトリーヌ・フロ、ジャン・ドルメッソン、イポリット・ジラルド
配給/ギャガ
公式サイト/http://www.daitouryo-chef.gaga.ne.jp
2013年9月7日(土)シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマほかにて全国順次公開
Les Saveurs du Palais © 2012 –Armoda Films- Vendome Production – Wild Bunch – France 2 Cinema
Text JUNE MAKIGUCHI