インタビュー
2016/06/02(木)

西加奈子、村田沙耶香、柚木麻子:これからのヒロイン~彼女たちは何を書いてきたのか

発売中のエル・ジャポン7月号にて、好きな本・好きなヒロインについて、泣いたり笑ったり、熱い思いを鼎談を通して語り合ってくれた注目の女性作家3人。自身の作品の延長線上にあるかのように、彼女たちが好きなヒロインには、不思議と3人それぞれの作風と通じる魅力がある。尽きることのない読書の奥深い世界を、本誌では書ききれなかったインタビューでご紹介!

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村田沙耶香さんが語るヒロイン

女性という性をどう生きるのか。 フラジャイルなのに手強い女たち

『消滅世界』は、セックスが消滅した近未来を描いた衝撃作だった。その根底に、村田沙耶香という作家の切実な思いがあることが、本誌の鼎談を通して伝わってきた。
 
村田 三島由紀夫の『音楽』のヒロイン・麗子は、兄から性的虐待を受けた過去があって、そのために音楽が聴こえない。精神分析をテーマにしたミステリーのような小説で、主人公の精神科医までもが彼女をセクシャルな目で見てしまう。その行動の異常性もきちんと描かれていて、彼の欲望のフィルター越しに彼女を見つめることになる。でも麗子は強い。負けてないんですよ、そこが好きなんです。
 
女性という性をいかに受け入れ、乗り越えていくのか。それはそのまま、この人が描いてきたテーマでもある。
 
村田 大学の時、私がとても尊敬している方が、〝主人公は必ず肉体がないといけない″と。たとえその人がどんな理屈を持っていたとしても、その理屈と肉体がちゃんと戦った先のことを描かないといけないということをおっしゃっていたんです。私はすごく理屈っぽくて、どちらかと言えば理論先行だから、うっかりすると肉体がない人、理屈だけの小説を描いてしまいそうになることがある気がして、その言葉をよく思い出す。肉体には主人公が持っている理論を裏切る可能性が常にあって、そこは戦わせないといけないとすごく思っているので、だからそういう小説に惹かれるのかもしれません。

村田さんが
好きなヒロインが登場する3冊
 
『音楽』
三島由紀夫著
新潮文庫 ¥490
麗子は少女期の兄との近親相姦で不感症に。精神分析をテーマにした異色作。
 
『ナチュラル・ウーマン』
松浦理英子著
河出文庫 ¥620
女性同士の恋を通して、男性器を挿入する以外の性愛のかたちを描いた問題作。
 
『氷』
アンナ・カヴァン著
山田和子訳 ちくま文庫 ¥900
氷に覆い尽くされる世界。姿を消した少女を追い、「私」は車を走らせる。

  • 河出書房新社刊 ¥1,600

    村田沙耶香

    1979年、千葉県生まれ。2003年『授乳』でデビュー。'09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、'13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞受賞。

    『消滅世界』
    世界大戦を機に、人は人工授精で子どもを産むように。夫婦間セックスは近親相姦としてタブー視され、男性も人工子宮で妊娠できる。セックスが消滅した近未来のパラレルワールドを描いた衝撃作。

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Photo: Akemi Kurosaka(Portrait), Asa Sato(books)  Text: Harumi Taki

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