レイチェル・マクアダムス:紅一点で挑んだ硬派ドラマでオスカー候補に!
本年のアカデミー賞で、作品賞&脚本賞をW受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』(現在公開中)。カトリック教会神父による児童への性的虐待を暴くジャーナリストを追う社会派ドラマで、紅一点の女性記者サーシャを演じ、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたのがレイチェル・マクアダムスだった。日本でも『きみに読む物語』等で知られる演技派女優がこの度、初来日。徹底した役作りや意外と素朴な趣味のエピソードを明かしてくれた。
オスカー受賞は逃しても悔いはなし!
―惜しくも、受賞にはなりませんでしたが、アカデミー賞助演女優賞のノミネート、おめでとうございます。
ありがとう。みんなから「残念だったね」って言われるんだけど、作品賞を獲れたことが最大の勝利だったと思ってるの。関係者全員がほんとに心から、喜んでる。私個人の助演女優賞は、ノミネートされただけで、いまでも受け止めきれないほどの衝撃だったから、それはこの際、いいの。作品賞はほんとにぎりぎりまで、わからなかった。獲れた瞬間の感激ときたら。監督はもちろん、モデルになった記者の方々や事件の犠牲者たちのことを考えたら、もらうべき賞だと思っていたから、「やっぱり、正義は勝つんだ」って誇らしい気持ちでいっぱいになったわ。
―実際の記者たちのチームワークを思い起させる、役者さんたちの素晴らしいアンサンブルは作品賞にふさわしいです。現場の雰囲気はどうだったんですか。
作品賞はまさにチームワークの成果だと思う。現場もすごく士気が高まっていたわ。主にトロントで撮影していたんだけど、スタッフも素晴らしかったし、例えば、たった1行の台詞しかない役者さんもとてもリアルな演技をする人ばかりで、私たちも演じながら、「これぞ本物のアンサンブルだ」という実感があったの。スポットライト編集部が地下だから、窓もないような気が滅入りそうなセットのなかに軟禁されて、みんなで一緒の時間を過ごしていくうちに、徐々にお互いのことを知り合い、なにか不思議な同士のような感覚が生まれていった。もちろん、題材に対してのリスペクトを常に抱いてはいるんだけど、監督の意思もあって、現場が沈鬱な気持ちになりすぎないよう、心がけて、明るくしていたかな。私たちが完全にチームとして、一丸となったのを見て、本物の記者の方々が「あのときの僕らとまるで、おんなじだ」って言ってくれたほどよ。私が演じたサーシャは編集部で一番、若くて、唯一の女性。彼女自身、自分が特別だとは一切、感じなかったって言ってたけど、それだけ、あのチームが一つになっていた証拠よね。
―あなたもいちばん若くて紅一点でしたよね。周囲の俳優陣は気を遣ってくれなかったですか(笑)。
全くないわ(笑)。みんな紳士だったから、特に問題もなかった。サーシャと同じね。
-
『スポットライト 世紀のスクープ』
02年、ボストン・グローブ紙が、神父による児童への性的虐待をカソリック教会が長年に渡って隠ぺいしてきたスキャンダルを暴き、全米に激震が走った。それまでタブーとされてきた闇に、地道な取材によって、光をあてたのが地元の新聞記者たちだった。記者役のマーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムスはそれぞれアカデミー賞助演男優、助演女優賞にノミネート。最終的に作品賞と脚本賞をW受賞する快挙を成し遂げた社会派ドラマ。現在公開中。
http://spotlight-scoop.com/
Photo: Toshiki Hiraiwa Interview & Text: Aki Takayama