負けず嫌いが火をつけた役者魂
―――『逆光の頃』は抒情的で余韻が素敵な青春映画でした。高杉さんにとってはどんな作品になりましたか。
出来上がった作品を観て、京都の素敵さがすごく詰まっていると思いました。京都に生まれて、京都に育って、京都で学生時代を過ごせなかったことが悔しくなるくらい。京都の方々のことがうらやましくなる作品でした。
―――そうですね。孝豊たちが通学帰りに鴨川を歩いていたりする何気ないシーンが、とてもよかったです。高杉さんは例えば、どんなところがうらやましかったですか。
なんていうんでしょう。孝豊たちがあのなかで生きていて、普通だと思っていること自体がもう、うらやましいなって思うんです。いろんなことに悩んで、時にけんかしたりして、その背景には鴨川や神社があって。本当にうらやましい環境なんですよね。
―――高杉さん自身は、学生時代にもう仕事を始めていましたよね? 普通に過ごす学生たちがうらやましく見えるところもありますか。
僕の学生時代はそんなに特別なこともなかったです。仕事をしてはいましたが、あとは普通です。ちゃんと学校行事にも参加していたし、放課後にはファミレスで友だちとだらだら喋ったり。しっかり学生を楽しんでいました。そういう普通の学生だったからこそ、孝豊たちの、その時ならではの状況がうらやましかったということもありますね。
―――どんな学生でしたか?
僕は本当に目立たない感じの、普通の普通でしたね。特に勉強をするでもなく、可もなく不可もなく。なんだろう。平凡に生きていました。仕事に関しても、悩みつつでした。しっかりやろうと考えたのは高1、2年くらい。その頃から、「この仕事が好きだな」と思い始めました。
―――何かきっかけがあったんでしょうか?
「もっと自分が頑張らなきゃ」と刺激を受けその影響も大きかったと思います。
―――いま若手俳優の活躍が目立っていますよね。「負けたくない」って思いますか。
僕は割といろんな方に対してそうなんです。本当に誰に対してもそう。大先輩に対しても、そうだし、本当に小っちゃな子役の子に対しても「負けたくない。頑張らなきゃ」という気持ちになります。「負けたくない」っていうよりはしっかり自分が頑張って、「追いつかなきゃ。引けをとらないようにしなきゃ」って感じですね。
―――負けず嫌いなんですね。
負けず嫌いなほうですね。もともとの性格だと思うんですけど、兄弟がいるせいかもしれません。
―――今回、共演した清水(尋也)さんは『渇き。』でも一緒でしたね?
ヒロとは割と仲よくて、今回も一緒にできて、うれしかったです。ほかの皆さんは「はじめまして」だったんです。葵(わかな)さんとか、金子(大地)君とか。でも、みんな話しやすくて、本当に同級生って感じがして、一緒にいやすかったです。
―――キャストは実際に共同生活したそうですね。
僕は5週間、京都に行きっぱなしだったんですけど、その間、金子君と尋が1週間ずつくらい一緒でした。でも、そんなに共同生活って感じでもなかったですね。撮影して、帰ってきて、また撮影といった感じだったので。劇中で、ヒロがギターを演奏するので、ずっと弾く練習をしていて、その横で、僕が京都弁の台詞を録音してもらったものを聞きながら、ぶつぶつ練習してたら、つっこまれたり……。そんな感じの日々でした(笑)。
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『逆光の頃』
京都で生まれ育った17歳の孝豊(高杉真宙)は高校2年生。伝承工芸の職人である父(田中壮太郎)と小料理屋を営む姉(佐津川愛美)と暮らす彼はどこにでもいそうな普通の男の子。バンドをやっている同級生の公平(清水尋也)が早々と自分の進路を決めたことに動揺したり、幼馴染のみこと(葵わかな)に淡い恋心を抱いたり、そのことでからかわれ、不良の小島(金子大地)と喧嘩したり。京都の街並みを背景に一人の少年の思春期ならではの心の動きが静かに流れていく青春映画。監督は『ぼんとリンちゃん』で高杉の演技を飛躍させた小林啓一。 -
高杉真宙(たかすぎ・まひろ)/1996年7月4日生まれ。福岡県出身。09年、舞台「エブリ リトル シング」で役者デビュー、翌年『カルテット』で映画初主演。TV特撮ドラマ「仮面ライダー鎧武/鎧武」(12、13)の龍玄役で二面性のある役を演じ注目を集める。14年、主演映画『ぼんとリンちゃん』でヨコハマ映画祭最優秀新人賞受賞。公開待機作に『トリガール!』(9月1日公開)、『散歩する侵略者』(9月公開)、『プリンシパル〜恋する私はヒロインですか?〜』(18年公開予定)ほか多数。
Photo : Sang-Hun Lee Styling : Masaki Kataoka(AVGVST) Hair&Make : Sayaka Tsutsumi Interview : Aki Takayama
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