インタビュー 2017/4/14(金)

今世界でいちばんおしゃれな芸術家! ポップアートの巨星、マウリッツィオ・カテランにロングインタビュー

『トイレットペーパー・マガジン』の創立メンバーにして、現代アート界で今もっとも注目されている人物のひとり、マウリッツィオ・カテラン。『エル・ジャポン』5月号でコラボレートした際に収録したインタビューを全公開。滅多に応じない超貴重なロングインタビューは必読!

クリスティーズで約19億円で競り落とされた作品、“HIM”(2001年) 

Photo : Zeno Zotti. Courtesy of Maurizio Cattelan's Archive

Q.これから来日する機会が増えるようですが、日本の建築についてはどう思いますか?
 
日本建築はすごく面白いよね。あの緻密さとミニマルさには魅かれるよ。日本は昔からの文化と新しい文化がうまく入り混じっていて、すごく興味深いと思う。ちなみに僕は最近、日本の建築家・安藤忠雄氏が手がけた古い家をトロピカル風にアレンジしているところなんだよ!(満面の笑み)
 
Q.それは楽しみですね。ちなみにこれまで作ってきた作品の中で、特に話題となったアート作品を教えてください。
 
そうだね、“HIM(写真:後ろ姿は子供なのに、前から見るとヒトラーが跪いている像)”、“無題(馬の頭が壁に突っ込んでいる作品)”、“L.O.V.E(ミラノの証券会社にある、中指を立てた銅像)”、“アメリカ(グーゲンハイムに置いてある使用可能な18金のトイレ)”とかかな。アート作品の意味については、観客に直接答えを与えるよりも、観客に疑問を抱かせる方に興味があるかな。だって、想像力を働かせるって楽しいじゃない?

金が行き交うミラノ証券取引所前で中指を立てる作品、“L.O.V.E.”(2010年)

Q.どうして雑誌にトイレットペーパーという名前をつけたのですか?
 
個人的に、この名前は最高だと思う! そう思わない? なぜならトイレットペーパーっていうのは、アートでも写真でもなく、単純にただのお尻を拭くトイレの紙なんだよ?(笑) 「トイレットペーパー」という言葉を聞いたら、何を思い浮かべる? これは、恐らく世界共通で誰もが知っているものだよね。ただそれは、裏を返せば皮肉な解釈でもあるんだ。トイレットペーパーというもの自体には、それほど価値はない。でもこれは、誰もが必要としているものなんだ。例えそれが、金持ちであっても貧乏人であってもね(笑)!

Photo : Courtesy of Toilet Paper Magazine

Q.『トイレットペーパー』が他社とコラボレーションをした商品は比較的手に入れ易い価格で販売されていますが、それは芸術家にとってマイナスではないですか? これによってあなた自身のアート作品が安く見られることになりかねませんか?
 
まず僕は、あれはデザイン・オブジェであって、アート作品としてはあまり思っていないんだ。あれらの商品は、毎日気軽に誰でも使えるものとして作られているから、見た目はポップアートを思い出すかもしれないし、デザインからシュールレアリズムを思い起こさせるかもしれない。でも、僕にとってはアート作品を売っているという認識ではないんだ。僕は前から、『トイレットペーパー』のイメージを、ティーカップやトートバックなど普段使えるものにプリントしたら面白いんじゃないかと思ってきた。これは「アート」という枠の外からでも楽しめる感じがするから……。(アートに)そういう楽しみ方があってもいいと思うんだ。最近はBMWやファッションブランドともコラボレーションをしたのだけれど、こういう機会を通して、アートの世界だけではできなかったことに挑戦できるのは本当にラッキーだと思っているよ。
 

  

Q.あなたにとって、雑誌の意味とは?
 
最終的に自分のなかでマガジンの意味というのは、様々なマーケットに流通していくことだと思っているよ。そのためにも、インパクトの強い風貌にこだわっているんだ。元々『トイレットペーパー・マガジン』の目的は、それ自体がブランド化すること。だから例えば今後、某高級ファッションブランドとコラボレーションをするときには、それはアートとラグジュアリー業界が融合することであり、自分たちが目標としていた「マガジンの意味」という定義が達成されることになるんだ。
 
Q.それではあなたとフェラーリ氏は、日本の現代アーティスト・村上隆氏みたいな働きをしたいということですか?
 
彼はすごいアーティストであるし、面白い作品を作ると思っている。でも自分は彼と同じことをしようとはあまり考えていないね。自分のアート作品をポップアイコンにしようと考えたこともないんだ。例えば、“La nona ora(ヨハネ・パウロ二世が隕石に当たって倒れている作品)”が、パオロ・ソレンティーノが監督したドラマ「The Young Pope」のエンディングで使われたりしていたけれど、自分の作品がこういう形で広まるとは思ってもいなかったんだよね。今となっては第三者が作り出した、自分の作品を用いた商品や映像が様々な場所で売られたり流通したりしているけれど、そもそもマウリツィオ・カテランとしての仕事は、アート作品を作るということ。そして『トイレットペーパー・マガジン』としての仕事は、広告やブランドとして大衆に流通するよう促すことなんだ。

祇園に『トイレットペーパー・マガジン』のアートワークで埋め尽くした「LOVE ROOM」が登場! (住所/京都市東山区八坂新地末吉町99-10 開館時間/11:00~19:00 休館日/水曜日 ※5月3日除く)

Q.今後の日本でのプロジェクトについて教えてください。
 
まずひとつ目は、4月15日〜5月14日まで開催予定の「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2017」で『トイレットペーパー・マガジン』の展示を行う予定。そして、2017年8月4日~11月5日まで開催予定の「ヨコハマ・トリエンナーレ」では、マウリツィオ・カテランとしての展示が予定されていて、どちらもすごく楽しみだよ。特に『トイレットペーパー・マガジン』の展示については、日本人に気に入ってもらえるんじゃないかな。とてもポップでエキセントリックな風貌だからね。今年の11月には、世界的に有名なギャラリー・ペロタンでの展示も控えているんだ。日本の観客がどういう反応をするのかを見るのが楽しみだよ!

Q.日本のエル読者に一言お願いします!
 
そうだな、僕の話をここまで聞いてくれてどうもありがとう。エル・ジャポンの編集長からブロッコリー(実際には松)のような柄の入った素敵な日本のお土産も頂いて満足だよ!(笑顔)またどこかでお会いしましょう、Ciao Ciao!

  • ELLE JAPON (エル・ジャポン) 2017年 05月号 アートBAG付き特別版
     
    通常版に『トイレットペーパー・マガジン』撮り下ろしのアートフォトのページを8P追加した特別版。もちろん表紙もマウリッツィオ・カテランとピエルパオロ・フェラーリのコンビが『エル・ジャポン』のためだけに創ったアートフォト。

    Amazon

  • 世界でここだけ! 付録は無料チケットになる「TOILETPAPER」の限定トートバッグ
     
    オリジナルのプロダクトだけでなく、「メゾン キツネ」や「MSGM」など気鋭のハイストリートブランドとコラボレーションし、数多くのファッションアイテムを発売してきた「トイレットぺーパー」。今回『エル・ジャポン』のために特別にトートバッグをデザイン。このデザインのバッグが手に入るのは世界でここだけとあって現在SNSで話題の的! しかも、このバッグをもっていればKYOTOGRAPHIEで彼らの展示物のひとつ「LOVE ROOM」に無料で入場可能! お見逃しなく。

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Interview & Text : Wakapedia

  • 【プロフィール】
    マウリッツィオ・カッテラン(Maurizio Cattelan)1960年バドヴァ生まれ。皮肉でスキャンダラスな作品によりNYのアート界で頭角を表す。現在、ジェフ・クーンズやダミアン・ハーストと並び称される伊現代芸術の先駆者。

     
    【活動歴】
    1989年アーティストとして本格的な活動を始める。その後フランスのポンピドゥー美術館、ニューヨーク近代美術館などで作品発表
    1996年リスの自殺「Bidibidobidiboo」を発表
    1997年競走馬を天井から吊るした「Novecento」発表
    1999年隕石が衝突したヨハネ=パウロ2世の蝋人形「La Nona Ora」を発表
    2000年グッゲンハイム・ヒューゴ・ボス賞のファイナリストに選出。
    2001年にアドルフ・ヒトラーをかたどった「Him」を発表
    2004年独アーノルド・ボーデ賞受賞
    2004年馬を天井から吊るした「The Ballad of Trotsky」(1996)がLVMH会長ベルナール・アルノーにより210万ドルで購入される
    2010年ミラノ証券取引所前(Borsa di commercio di Milano)にて中指を立てた手の彫刻「L.O.V.E.,」を発表。タイトルはliberta(自由)、odio(憎しみ)、vendetta(復讐)とeternita(永遠)の頭字語をとった。
    2010年サザビーズにて「無題」が790万ドルで落札される
    2010年ニューヨークのグッゲンハイム美術館にて回顧展「ALL」開催。美術館史上初、128すべての作品を天井から吊るし、1日4000人以上の来場を記録する。CBSにて特集番組放送。
    2012年『トイレットペーパー』がニューヨークタイムス誌が選ぶトップ10の雑誌に選出
    2013年パリ、パレ・ド・トーキョーがエントランスにて『トイレットペーパー』の作品を特集
    2016年フランスのモネドパリ(フランス国営造幣局)で個展を開催。
    2016年「Him」がクリスティーズで約17,200,000ドルで落札される。
    2016年グッゲンハイム美術館で全て18金で作製された「アメリカ」という名の黄金のトイレを披露し、実際に観客が利用することができるなど、インパクトのあるコンセプトで大きな反響を呼んだ。
    2016年BBCにてドキュメンタリー「The Art World's Prankster: Maurizio Cattelan」放送

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