●最初に大切だったのは、理念への賛同
それでも、起業するときは、素材の調達、理念に賛同してくれる職人の確保など、貯めたはずのお金も予想以上にすぐ底をついてしまい、増資のための資本金を集めなければいけませんでした。
―職人さんにまで理念への賛同が必要だったのはなぜですか?
「HASUNA」で取り扱う金にはフェアトレードで仕入れたものを取り扱っています。しかし、職人さんからしてみれば、私たちの(エシカル)なルートで確保したものも、そうでないものも同じ金です。例えば18金チェーンの製造の過程で、同じものだったら既に(すぐ使えるように)日本で手に入れた既成のチェーンを使ったほうが楽です。エシカルなルートで手に入れたもののほうが、手間も時間もかかり加工が難しい。そんなとき、理念を理解してくれる職人さんでなければ作れないのです。
今、南青山に本店がありますが、ブランド立ち上げ当初はオーダージュエリー専門だったので、知り合いから少しずつ発注を受けて、デザイン打ち合わせには素材見本とスケッチブックをごっそり抱えて、待ち合わせ場所のカフェに行くような形でした。でも、カフェで石やら金属やらをずらっとテーブルに並べて、何か売っていたら確実に怪しい人ですよね(笑)。そういうこともあって、やはりひとつスペースは確保しておいた方がいいと思って物件を探していたところ、ちょうど良い空き物件がたまたま南青山にあったので入りました。
今は、既製のジュエリーコレクションも扱っていますが、最初は本当に上がってきたものを見て「何、コレ!?」と声を上げてしまうようなものでした。それを、郵送や電話会議で、少しずつ少しずつクオリティを上げるようにしていきました。男性が鉱山労働者として働いている場所では、夫を事故で亡くしたものの、宗教的文化的な状況もあって、女性が自由に働けず、でも一家は食べさせていかねばならないというような、厳しい環境にある人たちがたくさんいます。そういった女性たちの職業訓練や自立支援としても役に立つと思っています。
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白木 夏子 (しらき・なつこ)
HASUNA Co.,Ltd.代表取締役・チーフデザイナー。1981年鹿児島生まれ、愛知育ち。2002年から英ロンドン大学キングスカレッジにて発展途上国の開発について学ぶ。卒業後は国連人口基金ベトナム・ハノイ事務所とアジア開発銀行研究所にてインターンを経験し、投資ファンド事業会社勤務を経て、2009年4月にHASUNA Co.,Ltd.を設立。人と社会、自然環境に配慮したエシカルジュエリーブランド事業を展開。
日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2011キャリアクリエイト部門受賞。
2011年世界経済フォーラム(ダボス会議)が選ぶ日本の若手リーダー30人に選出。
2011年AERA「日本を立て直す100人」に選出。
2012年APEC(ロシア)日本代表団としてWomen and Economy会議に参加。
2013年世界経済フォーラム年次総会にGlobal Shaperとして出席公式ホームページ:http://www.hasuna.co.jp/