エマ・ワトソン、しなやかな“活動家”の誕生
強烈な知性、熱意、そして軽やかさ。エマ・ワトソンはみずみずしいフェミニズム運動のニューフェイスだ。ニューヨークの国連本部で歴史的なスピーチを行った彼女を、UK版エルの編集長、ロレイン・キャンディが追った。スピーチまでの葛藤を、自身の人生を交えながら率直に語った貴重なインタビューをお届けする。
実は、このインタビューと表紙の撮影は、今年8月の国連ウィメン親善大使就任発表の翌日に組まれたものなのだ。いまここにフェミニズムの新たな語り手であり好奇心あふれる聡明な女性が登場し、新しい世代をインスパイアする。なんて素晴らしいことだろう。*9月21日、日曜日。ニューヨーク、セントラルパーク。国連でのスピーチを終えたエマに、いまこうして向かい合っている。「ずっとこういうことがやりたかったの」と、湿ったベンチに座ったエマが言う。「大学を卒業したとき、何かが足りない気がした(彼女はニューヨークのブラウン大学で英米文学を専攻し、今年5月に卒業した)。演技は続けたいと思っていたけど、何か別のことがしたかった。有名になって嫌なこともあるし、名声を乗りこなすには感情的な格闘があったわ。でも、ちょっと変だけど、私にとってはそれが名声というものを理解して、使いこなすやり方なの。名声を何か別のことに結びつけるやり方を見つけて、すごく扱いやすくなったわ。私はこのやり方を信じてるの。何時間でも話せるわ」
それは嘘ではない。フェミニズム、フェミニスト、フェミニストのアーティスト。何時間だって話すだろう。「私、こう思うの」。彼女はきっぱりとした口調で言った。「フェミニズムは誰かに指図するためにあるんじゃない。規範や教義じゃない。私たちは、選択肢を与えるためにやっているんだわ。大統領選挙に出たかったら出ればいいし、出なくてもなんの問題もない。脇を剃るか剃らないかとか、今日はフラットシューズで明日はハイヒールを履くとか、そういうのは本質に関係のない、あまりにも見当違いで表面的なことなのよね。みんながつまらないことにとらわれないように願うわ。私たちは女性が自信を持てるようにしたいの。やりたいと思ったことができて、自分自身に正直になれて、成長する機会を持てるように。女性は、自分たちは自由だって思えるべきだわ。フェミニストに典型はないわ。基準なんてないのよ」
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★国連初の男女平等のためのキャンペーン
女性の権利と完全な男女平等を支援する世界規模の男女連帯運動を促進するために行われたこのイベントをきっかけに、12 ヵ月の間に10 億人の男性たちを動かし、ジェンダー平等への変化の主体となってもらうことをキャンペーンの主旨としている。「2030 年までにジェンダー不平等を終わらせようとしています。男女平等達成のために、男性たちに変化の主体として参加してもらうことが目的なのです」と事務局長は語っている。
Photo KERRY HALLIHAN Styling ANNE-MARIE CURTIS Text LORRAINE CANDY
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EMMA WATSON エマ・ワトソン
1990年、フランス・パリ生まれ。両親の離婚とともにイギリスに帰国し、オックスフォードとロンドンを行き来して育つ。10歳で『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニー役に抜擢。狂騒ともいえる人気の陰で学業に励み、今年の5月にブラウン大学を卒業した。