オスカー女優、ヒラリー・スワンクが選ぶ今年のベスト映画
読者が選ぶ今年のNo.1映画「ELLEシネマ大賞」。年末の投票に先駆けて、続々と著名人や映画関係者からの私的ベストを公開中! その皮切りとして、あのオスカー女優、ヒラリー・スワンクが特別参戦。日本では2015年の公開となる、彼女の最新主演作『サヨナラの代わりに』(11月7日公開)の見どころとともに、自身の出演作以外でセレクトした今年のNo.1映画についても熱く語る!
40代になって困難を障害ではなくギフトと思うように
―役柄に関してはどうですか。いつも素晴らしい役を演じていますが、女性として、目標としているキャラクターを演じているのですか。
いままで演じてきたキャラクターは全部、私の心のなかに居場所があります。その役柄と出会うことによって、私はいろんなことを学び、よりよい人間になっていったと思うの。実在の人物を演じることで、私の人生はさらに豊かになったわ。とはいえ、何よりもストーリーを読んだときに感じる「この作品は絶対にやらなきゃ」という直感、これに尽きます。私がそういった役柄を探し出しているわけではなくて、たまたま、振り返ってみると、力強いストーリーやキャラクターと出会ってきていた。ただただ、ラッキーなのだと思う。
―演じる役柄とつい、あなた自身を重ねて見てしまうんです。多くの人がそうだと思います。
よく言われます! うちの母がよくふざけて、「あなたのことを多くの人がすごいドラマチックな人間だって、勘違いしてるんだから、それってアカデミー賞級の演技よ」って言うのよ(笑)。母は家にいるときの、いたって普通の、ときにはバカなこともやったりする私のことをよく知ってるから。
―それまで順風満帆な人生を送ってきたケイトが病気に倒れて初めて挫折を味わい、ベックに「挫折したことある?」と聞くシーンが印象的ですが、あなた自身はどうですか。
もちろん、私だって、挫折してる。人間なんだから、誰だって、そんな瞬間はあると思う。だからこそ、みんなが共感できるのではないかしら? 誰もが経験する、「どうやって、この困難を乗り越えたらいいの?」っていう感覚。人は誰だって、ひとりでは生きていけない。そんなとき、誰の助けを借りるのか。みんな一度や二度は経験があることよね。
―よかったら、どう乗り切ってきたか、教えてください。
やっぱり素晴らしい家族や友だちがいてくれれば、心強いですものよね。でも、40代になった現在は、自分の目の前に突然、壁が立ちはだかったなら、それを障害ではなく、そこから何かを学ばなければならない、いいきっかけだと思うようになったの。ネガティブにならずに、それをギフトだと捕えるようにしているのよ。だって、人の一生って本当に短い。私は健康そのものだから、見落としがちだけど、今回のような役柄を演じると、いまの自分の環境に感謝の気持ちでいっぱいになる。「生きているって素晴らしいな」って心から思うの。何か困難があるとしたって、ケイトの病気ほど、重大なものではない。それなら、そこまでシリアスに考え過ぎるのもどうかと思います。健康をはじめ、感謝すべきことが身の回りにたくさん、あるのなら、そんなちょっとした問題でいちいち、くよくよ迷うべきではないと思うんです。
―劇中、セレブ妻のケイトの「マノロ ブラニク」の靴やツイードのジャケットなど、ワードローブが素敵でしたが、普段のファッションはどんなものが好みですか。こだわりなど、ありますか。
私が好きなスタイルはひとつには絞り切れないの。その時のムードによって、変わっていくから。シンプルにTシャツにジーンズでボーイッシュな時ときもあれば、ジーンズにヒールを合わせておしゃれしたりもする。その日の気分に合った服装をするようにしているわ。ルールがないのがルール。音楽みたいに好きなジャンルを決められない。自由がいちばんね。
Text: Aki Takayama Hair: YOSHi.T for MONDO(AVGVST) Make-up: Ken Yoshimura(AVGVST)
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『サヨナラの代わりに』
余命を告げられた女性とその介護をすることになった夢に挫折した女子大生、正反対の二人が限りある時間のなかで友情を築いていく。弁護士の夫(ジョシュ・デュアメル)と充実した日々を過ごしていたケイト(ヒラリー・スワンク)は突然。難病である筋委縮側索硬化症(ALS)を発症する。一年半後、一人では動けなくなったケイトは介助の素人どころか普通の家事さえもろくにできないベック(エミー・ロッサム)を介助人に選ぶが……。2015年11月7日より公開。
http://sayonarano-kawarini.com/