インタビュー 2016/8/9(火)
『太陽のめざめ』主演にロングインタビュー

少年犯罪に向けたカトリーヌ・ドヌーヴの誠実な視線

ファッションアイコンとして生ける伝説となっている仏女優カトリーヌ・ドヌーヴ。その波乱万丈な人生と気難しさでも有名な彼女が今回『太陽のめざめ』(現在公開中)で演じたのは、少年犯罪者たちに向き合う家庭裁判所判事。6年ぶりに主演作が日本公開となるドヌーヴへのロングインタビューで見えてきたのは、イメージとは裏腹な、すべての人への真摯な視線だった。

カンヌ国際映画祭でのレッドカーペットにて。

Photo : Getty Images

──ブノワ・マジメルとは『夜の子供たち(’96)』以来の共演ですね。

ブノワの演技にはとっても心を動かされてしまう。彼は指導員という役を演じるにあたって、とても感受性豊かに、しかも集中してこの傷ついた男の役に臨み、見事にこなしていると思うわ。指導員と判事との関係を私たちは少しずつ発見していった。彼の演技は正確無比で、しかも彼自身も忍耐にあふれている。彼のような忍耐と献身にあふれた人は、ちょっといないわね。ふたりのシーンはすべて気に入っている。エマニュエルがこの映画で発見した、言葉を交わさないシーン、視線を交わすだけのシーンがとくに。

──サラ・フォレスティエとは、今回が初めてですね?

彼女が演じたマロニーの母親役は、生やさしいものではないと思うけれど、彼女の演技はとても印象的。サラは勇気のある、非凡な俳優だと思うわ。リハーサルでは、もっと地味な感じの演技だったけれど、本番では大胆な演技を見せて、それに対してエマニュエルも全幅の信頼をおいていたわ。

ドヌーヴが絶賛するエマニュエル・ベルコ(左)と、ロッド・パラド。「監督にムダな質問をしなければいけないのは、そうしないといけないからにすぎない」。この台詞に大女優のエッセンスがつまっている。

──『ミス・ブルターニュの恋』では動きまわってらっしゃいました。しかし今回は、ずっと座ったままの演技ですね。

ええ、トルソーね(笑)

──同時に、監督のエマニュエル・ベルコの演出も、静的で動きを抑制するような感じです。

そうね。でも、エマニュエルはマルチ・カメラで撮っていて、複数のテイクを重ねている。だから、オフィス内でのシーンすべて、編集の力もあって活力あふれたものにできていると思うわ

──彼女の特筆すべき点はどういったところとお考えですか?

彼女の才能よ。もちろん、この言葉はいろんなことを含んでいるけれど、彼女の才能のあり方と言っていいかしら。脚本は磨き抜かれており、読めばもう一行たりとて直す必要がないことにすぐさま気づくでしょう。でも、映画に完全にフィットし、誰もが納得してくれるよう、何度も手を入れ続けるのよ、彼女は。そして彼女は常に先頭にいて、すべてに決断を下すことができる。希望どおりとは思えないような場所にロケハンに出向かなくてはならないときにも、自ら望んで「なんてことないわ。とにかく行くから」と言って出かけるような人。求めるものを手に入れるためなら、どんな苦労も厭わない。たぶん、そうしないと彼女自身が満足できないのね。
 
この映画では、彼女が望むように仕事ができたのじゃないかしら。だからこそ、私たちもムダな質問をしないで済む。そうしなければならないのは、そうする必要があるからにすぎない。彼女は休むことなく、常に働き続けている。その疲れはいかほどかと思う。彼女のなかにあるエネルギーと集中力、そして厳密さに敬服するわ。この映画にかける彼女の思いと働きぶりには驚かされてしまう。つねに確かな視座が確保されていて、その視座は正しく、正確で、しかも本物。だからこそ、力強く、同時に光にあふれたポジティヴな作品になっているのよ。

  • 『太陽のめざめ』

    親の愛を知らず人生に迷う少年と心優しい判事が出会い、新たな道をみつけるまでを描く温かな道のり。判事のフローランス(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、母親(サラ・フォレスティエ)に置き去りにされた6歳の少年マロニーを保護する。しかし10年後、16歳となったマロニー(ロッド・パラド)は、育児放棄により心に傷を負い、学校にも通えず非行を繰り返していた。ふたたびマロニーと再会したフローランスは、似た境遇でありながら更生したヤン(ブノワ・マジメル)を教育係に、マロニーが人生をみつけられるように優しく手を差し伸べる。そして、田舎の更生施設に行ったマロニーは同年代のテス(ディアーヌ・ルーセル)と恋に落ちるが…。

    監督/エマニュエル・ベルコ『なぜ彼女は愛しすぎたのか』『ミス・ブルターニュの恋』
    出演/カトリーヌ・ドヌーヴ『シェルブールの雨傘』『8人の女たち』、ロッド・パラド、ブノワ・マジメル『ピアニスト』、サラ・フォレスティエ『戦争より愛のカンケイ』、ディアーヌ・ルセール
    http://www.cetera.co.jp/taiyou/  

    第68回 カンヌ国際映画祭 オープニング作品
    第21回 リュミエール賞受賞 有望若手男優賞(ロッド・パラド)
    第41回 セザール賞 主要8部門ノミネート、2部門(助演男優/新人男優)受賞
    フランス/2015/119分/日本語字幕:古田由紀子/R15+/協力:ユニフランス・フィリムズ/配給・宣伝:アルバトロス+セテラ・インターナショナル © 2015 LES FILMS DU KIOSQUE - FRANCE 2 CINÉMA - WILD BUNCH - RHÔNE ALPES CINÉMA – PICTANOVO

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