ゴシップやスナップやエンタメなどなど、情報の波に飲まれてしまいそうになっている日々、一服の清涼剤は、「くる！」と思わせてくれる才能あふれる若人たち。
 
まず1人目はロッド・パラド(Rod Paradot)。

どうでしょう、このイケメンじゃない感。野暮ったく、粗野。北関東の香りがします。安心してください、悪口じゃありませんよ。北関東出身の自分としては懐古の情に浸れます。

ロッドくん、若干19歳にして今年の仏セザール賞の最優秀有望新人賞を受賞した実力派。カンヌ映画祭のオープニングも飾った主演作『太陽のめざめ(La Tête haute)』での受賞。もう、この作品の演技が壮絶すぎて、出張の飛行機のなかで「言いたいことも言えないこんな世の中じゃポイズン」と口ずさんでしまったほど……。すいません、嘘つきました。繊細で壊れそうだからこそ粗野で暴力的。そんな役を彼ほど完璧に“演じた”10代を見たことがありません。

本人もすごく繊細な人のようで、セザール賞のスピーチでは感動のあまり泣きそう、というより半分泣いていて、泣き出すのをこらえるのに必死。「こんな大きなセ、セジャァル賞に選んでもらってぇ……す、すぅごぃ、ウウッ、嬉しすぎて……監督にはマジで感謝した、したいっす」。こんな感じ。そんな姿に、客席ほとんどがアーメンポーズでうるうる。極め付けに「ママン、ありがとう。オレのこといつもし、しんよぉぉぉぉっ……してくれて」って……。犯罪なみの胸キュンフレーズに会場の年上女子9割がツボつかれたに違いありません。カンヌでは監督、カトリーヌ・ドヌーヴ、サラ・フォレスティエら大層存在感ある女優陣が子犬のようにかわいがっていたのも納得。そのうえ現在モード界からも注目が集まっている、といってもまだまだ高校生。変な大人に囲われることなく、素敵な女性たちに育てられ、長く愛される素敵な俳優になってくれること激しく希望。

『太陽のめざめ』 
原題タイトル「頭を高く」の通り、胸を張り堂々と歩くことができる人生に至るまで、社会の底辺に生まれた子どもをいかに育てるかを丁寧に描いた作品。育児能力のない親のもとに生まれたがゆえ、情緒や倫理観の欠けた問題行動ばかりを起こす少年。裁判官と保護観察官の温かな眼差しのもと、プログラムは成功したかに見えたが……。こう書くと、パツキン先生かはたまた夏休みお涙頂戴2時間ドラマSPか、という感じに聞こえるけれど、彼が演じた不良少年マロニーの精神不安定っぷりがハンパなさすぎて、その壮絶さは体感で「積み木崩し」の約2倍。退廃系美人サラ・フォレスティエ演じる母の場末感もハンパなく、女優ってすごいな、と思わせてくれます。