インタビュー 2016/8/9(火)
『太陽のめざめ』主演にロングインタビュー

少年犯罪に向けたカトリーヌ・ドヌーヴの誠実な視線

ファッションアイコンとして生ける伝説となっている仏女優カトリーヌ・ドヌーヴ。その波乱万丈な人生と気難しさでも有名な彼女が今回『太陽のめざめ』(現在公開中)で演じたのは、少年犯罪者たちに向き合う家庭裁判所判事。6年ぶりに主演作が日本公開となるドヌーヴへのロングインタビューで見えてきたのは、イメージとは裏腹な、すべての人への真摯な視線だった。

更生施設のシーン。右端で見切れているのは、エマニュエル・ベルコ監督。

──あなたは演じられる対象を綿密にリサーチされるよりも、想像力を駆使して役づくりを行うことを好まれることで知られています。実際に少年裁判所で起こっていることを見たいと言ったのはあなただったとか?

エマニュエルと私は、早い段階から、実際にどんなことが行われているのか、行って見ることが重要だと考えていたの。資料のうえでのリサーチだけじゃなく、現場の雰囲気や声音、人々がどんな風に自分を表現をしているのか、どんなふうに話し、振る舞うのか、実際に見て感じることが肝心だと見なしていた。判事のような役を演じるときは、ひとり人物になりきるのではなく、物語のなかの単なる役割として表現してしまう危険があるものよ。
 
脚本は素晴らしいものだったし、役も気に入っていたけれど、実際よく考えてみると、かなり難しい役でもあった。だから、何度も何度も自分に対して問答を繰り返したの。台詞も、厳密に現実にもとづいたもので、法律の専門用語もたくさんあった。だから、実際の法廷でのやり取りを見て、知っておく必要があった。数週間にわたって、いくつもの法廷や公聴会を見学したわ。強く印象に残っているのは、ふたりの少年とひとりの少女の裁判で、彼らがけっして父親と一緒に帰ろうとはしなかったことね。母親ももちろんそこにいたのに。少年たちの指導員や弁護士、判事たちもいた。そこにいた誰もが、この苦痛に満ちた、ドラマティックな芝居の登場人物だった。
 
もっとも驚いたのは、そのドラマの最重要人物は子どもたちであり、すべての人も時間も、彼らのために割かれていたということよ。私たちが住んでいるのは、これほどまでに文明化した社会なわけね! その忍耐も、その堅忍も、けっして知られることのない人たち、そこで身を粉にして子どもたちのために身を捧げている人たちのことを、この映画が少しでも世に広めることができたらと思うわ。彼らを衝き動かしているもの、少年たちの心情を最大限に斟酌しようという態度に心を打たれたわ。

  • 『太陽のめざめ』

    親の愛を知らず人生に迷う少年と心優しい判事が出会い、新たな道をみつけるまでを描く温かな道のり。判事のフローランス(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、母親(サラ・フォレスティエ)に置き去りにされた6歳の少年マロニーを保護する。しかし10年後、16歳となったマロニー(ロッド・パラド)は、育児放棄により心に傷を負い、学校にも通えず非行を繰り返していた。ふたたびマロニーと再会したフローランスは、似た境遇でありながら更生したヤン(ブノワ・マジメル)を教育係に、マロニーが人生をみつけられるように優しく手を差し伸べる。そして、田舎の更生施設に行ったマロニーは同年代のテス(ディアーヌ・ルーセル)と恋に落ちるが…。

    監督/エマニュエル・ベルコ『なぜ彼女は愛しすぎたのか』『ミス・ブルターニュの恋』
    出演/カトリーヌ・ドヌーヴ『シェルブールの雨傘』『8人の女たち』、ロッド・パラド、ブノワ・マジメル『ピアニスト』、サラ・フォレスティエ『戦争より愛のカンケイ』、ディアーヌ・ルセール
    http://www.cetera.co.jp/taiyou/  

    第68回 カンヌ国際映画祭 オープニング作品
    第21回 リュミエール賞受賞 有望若手男優賞(ロッド・パラド)
    第41回 セザール賞 主要8部門ノミネート、2部門(助演男優/新人男優)受賞
    フランス/2015/119分/日本語字幕:古田由紀子/R15+/協力:ユニフランス・フィリムズ/配給・宣伝:アルバトロス+セテラ・インターナショナル © 2015 LES FILMS DU KIOSQUE - FRANCE 2 CINÉMA - WILD BUNCH - RHÔNE ALPES CINÉMA – PICTANOVO

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