>
<

(C)2013 畑事務所・GNDHDDTK

3/3

『風立ちぬ』と2本セットで観てみよう!

でもさ、映像の美しさに騙されちゃう部分があるけど、この“かぐや姫の苦しみ”ってある意味、彼女の(女性だからというわけではないけれど)エゴイズムだよね。
 
男からすると、かぐや姫という魔物を心の中で全開にしてる女性に、恋なんかしちゃうと大変なことになりますよ。5人の求婚者は確かに愚かだし、ずるい男もいるけれど、振り回されて財産を失ったり(笑)、いや笑い事じゃなく死んじゃう男もいる。姫も真面目だけど、死んじゃったお金持ちの若者も純情。純情とか真面目さって恐ろしいことです。この映画は、女と男のぶつかり合い、愚かさとエゴのぶつかり合いを描いている気もします。
 
ところで、かぐや姫の幼なじみの捨丸兄ちゃんは、なんであんなに美形に描かれていたんだろう……? ジャパンアニメとして海外市場を意識したのかな(笑)。かぐや姫と彼の再会シーンを注意深く鑑賞していただきたいんですが、この映画、完全に不倫を肯定してます。アニメで「空を飛ぶ」というのはもちろんセックスの象徴ですし。僕が監督だったら、そんな捨丸には平凡な顔の平凡な男であってほしいんだけど、でも女性の観客は、あれイケメンじゃないと納得しないんですかね。ということは、やはり女性向けに作られた映画なのかな。 
 
男のエゴを描ききったと評判の『風立ちぬ』(監督/宮崎駿)と『かぐや姫の物語』を、スタジオジブリのプロデューサーは本当は併映で公開したかったんだという話も聞きました。でも、僕という“男”の感想ですが、『風立ちぬ』の主人公の奥さんって、ぜんぜん不幸じゃないよね。自分が“死ぬこと”を知っている、とても賢い女性です。というと、女の人に「男の勝手で、女に賢さを求められても、いやな感じ!」って怒られるかな。だったら「とても賢い“人間”です」と言い直します。
 
先輩後輩であり共同作業者であった高畑監督と宮崎監督が、着想の段階から意識しあっていたかどうかはわかりませんが、『かぐや姫の物語』と『風立ちぬ』は結果的に見事に“対”になってる映画だと思います。大切なパートナーがいる方は、もし機会があったら2人で2本続けてご覧になってみてください。そして、お互い「どんな感想を持ったか」話し合ってみるのも楽しいんじゃないかと思います。もしかしたら大喧嘩になるかもしれませんが、それはそれで楽しいんじゃないかとも思います。
 
■今回の格言/「人間だったら引き裂かれて生きるのは当たり前。だからといって、心の中の“かぐや姫”を全開にして生きてると、あなただけじゃなく相手も苦しいよ」

「【第3回】女の人の心には“かぐや姫”という魔物が住んでいる」トップへ
  • 二村ヒトシ/アダルトビデオ監督。1964年六本木生まれ。慶應大学文学部中退。1997年にAV監督デビュー。痴女もの、レズビアンものを中心に独創的な演出のアダルトビデオ作品を数多く手掛けるかたわら、『すべてはモテるためである』(イースト・プレス刊)、『恋とセックスで幸せになる秘密』(同)などの著書で、恋愛やモテについて鋭く分析。女性とセックスを知り尽くした見識に定評がある。最新刊『淑女のはらわた』(洋泉社刊)も好評発売中。
    http://nimurahitoshi.net/

  • 『かぐや姫の物語』
    監督/高畑 勲
    声の出演/朝倉あき、高良健吾、地井武男、宮本信子
    配給/東宝
    公式サイト/http://www.kaguyahime-monogatari.jp/
    全国東宝系にてロードショー

MORE TOPICS

SHARE THIS ARTICLES

前の記事へ特集一覧へ次の記事へ

CONNECT WITH ELLE

エル・メール(無料)

メールアドレスを入力してください

ご登録ありがとうございました。

ELLE CLUB

ようこそゲストさん

ELLE CLUB

ようこそゲストさん
ログアウト