【第11回】フランス映画『ジェラシー』に見る、恋愛における因果応報とは?
『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』『すべてはモテるためである』などの著書で恋愛とモテについて説き、アダルトビデオ監督としてあくまで女性目線での作品づくりに定評がある“女性と性”のエキスパート、二村ヒトシさん。そんな二村さんが毎月1回、新作映画からラブ&セックスを読み解く連載。第11回は、ある男女の恋愛模様をリアルに切り取ったフランス映画『ジェラシー』を斬る!
嫉妬しあい、依存しあう男女
物語はルイとクローディアを中心に展開しますが、ふたりは愛し合っているのではなく、お互いに“心の穴”を埋めあっているだけ。
クローディアも女優ですがオーディションに落ち続けて、仕事がない。しかもエキセントリックな、“かまってちゃん”タイプです。近くにいる人の感情を揺さぶる、依存しがちな女性。ただルイの娘に対しては心から優しく接し、意気投合します。悪女というわけではない。
クローディアとルイは、どちらかが被害者なのではありません。お互いに依存しているんです。ルイは過去にさんざん女と遊んでいるし、クローディアはそれをわかってるから情緒不安定になる。そしてお互いに別の異性と会ったりして、嫉妬をあおるような行動をとる。
クローディアが、ルイと暮らすアパートが「暗くて狭くて、もうイヤだ」と文句をつけるシーンがありますが、あれって相手を責める理由がほしいだけですよね。日本人の我々にすれば、昭和のドロドロした恋愛映画だと四畳半で同棲してセックスしたりしてますから、パリの屋根裏のアパルトマンなんて素敵じゃんって思いますけど、パリジャンにはパリジャンの憂鬱があるんですね(笑)。
ジェラシー(嫉妬)は、映画のタイトルにもなってますが、このふたりの関係の根っこなんでしょう。常にどちらかがどちらかに嫉妬している。役者という同じ職業だから仕事のことだったり、他の異性からモテていることだったり。
だけど気をつけなくちゃいけないのは、わざと相手を嫉妬させるような振る舞いをしていると、必ず自分も同じ目にあうこと。報いを受けるんですよ。復讐されるということではなく、人生における因果応報。なぜなら、そういうことをしている人間は、相手ではなく実は自分自身を憎んでいるからです。手に入らないものを求めて、自分から穴に落ちていく。
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二村ヒトシ/アダルトビデオ監督。1964年六本木生まれ。慶應大学文学部中退。1997年にAV監督デビュー。痴女もの、レズビアンものを中心に独創的な演出のアダルトビデオ作品を数多く手掛けるかたわら、『すべてはモテるためである』(イースト・プレス刊)、『恋とセックスで幸せになる秘密』(同)などの著書で、恋愛やモテについて鋭く分析。女性とセックスを知り尽くした見識に定評がある。最新刊『淑女のはらわた』(洋泉社刊)、『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(文庫ぎんが堂刊)も好評発売中。
http://nimurahitoshi.net/ -
『ジェラシー』
監督/フィリップ・ガレル
出演/ルイ・ガレル、アナ・ムグラリス
配給/boid、ビターズ・エンド
公式サイト/http://www.jalousie2014.com/
2014年9月27日(土)~、渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開