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野心のある若い男にご用心

夫に惚れているのに放っておかれている美しい女医(シャロン・ストーン)は、フィオラヴァンテを気に入ってしまいます。お金があるけど寂しい女性が男性を買うことがあるのはアメリカでも日本でも同じですが、なぜ男の風俗ほど盛んにならないかというと、結局のところ「女は、男をお金で支配したいわけじゃない」からだろうと僕は思います。
 
たいていの男には(お金でとは限りませんが、なんらかの“力”で)女の人を支配したいっていう気持ちが根っこにあります。金持ちの男にとって風俗や買春は、性欲処理や癒しという意味だけではなく、自分の“力”を使って女の人の時間を買うことが快感なんです。自分の力を相手に見せて自分でも確認したい。それはデートで恋人を高級レストランに連れて行ったりするのも一緒です。魅力や優しさで相手の心に入りこんで支配するか、お金や社会的なステイタスで支配するか。どちらにせよ、それが平凡な“モテたい男”がやることです。
 
ところがフィオラヴァンテは、女の人と張り合おうとしていないから、自分がお金で買われても本気で平気です。プライドが傷つくことがないんです。彼が枯れた中年だというのもポイントかもしれない。この男娼がもしギラついた中年だったら、愛情に見せかけたアプローチやセックスの技法でお客の女性を支配しようとするだろうし。もし貧乏で野心のある若いイケメンだったら、最初はペット扱いされていても、いずれその女性を乗り越えようとして、いばり始めます。
 
お金はあるけど寂しい気持ちを抱えた女性は、貧乏な若い男の子に貢いで孤独を埋めたりしがちです。でも、もし選べるんだったら、野心を見せるギラギラした男は避けたほうがいいんじゃないだろうか。いかにもホストみたいなタイプはやめて、遊ぶんだったらフィオラヴァンテみたいな「欲のない、達観したような男」がベターだと思うんです。

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  • 二村ヒトシ/アダルトビデオ監督。1964年六本木生まれ。慶應大学文学部中退。1997年にAV監督デビュー。痴女もの、レズビアンものを中心に独創的な演出のアダルトビデオ作品を数多く手掛けるかたわら、『すべてはモテるためである』(イースト・プレス刊)、『恋とセックスで幸せになる秘密』(同)などの著書で、恋愛やモテについて鋭く分析。女性とセックスを知り尽くした見識に定評がある。最新刊『淑女のはらわた』(洋泉社刊)、『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(文庫ぎんが堂刊)も好評発売中。
    http://nimurahitoshi.net/

  • 『ジゴロ・イン・ニューヨーク』
    監督・脚本/ジョン・タトゥーロ
    出演/ジョン・タトゥーロ、ウディ・アレン、ヴァネッサ・パラディ、リーヴ・シュレイバー、シャロン・ストーン
    配給/ギャガ
    公式サイト/http://gigolo.gaga.ne.jp/
    公開中

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