保守化する若手女性を襲うキャラ弁という不合理
2017/11/27(月)
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数値を素直に観れば、「イクメンが増えた」という報道は嘘?

Photo: Getty Images

両立を阻む要因:なぜか減らない家事労働負担

両立を阻む要因のひとつが日本人の長時間労働であることは疑いようもありませんが(妻の側だけでなく夫の協力を受けられないという意味からも)、ようやく働き方改革という名のもと少しずつメスが入りつつあります。日本人の働き方の問題の本質、結果を出すことよりも一緒にいることで安心感を求めてしまうことは指摘されています。ゴールに辿りつくことより、そのプロセスがあまりにも重要視されるがゆえ、効率的な手段が軽視されてしまう(今になってようやく問題提起やその解決のためのトライアルが始まっています)。
 
しかし、日本女性の両立を阻むのは、仕事の効率軽視だけではないようです。

現代若年女性は、高度成長期~バブルを駆け抜けた彼女たちの母親世代とほぼ同じ時間を家事に費やしていることがわかる。

もうひとつの驚きのデータがあります。働く女性の平日家事時間は1986年以来ほとんど減っていないのです。男性の家事労働は少しずつ増えており(と言っても週に30分も増えていませんが)、そして全自動洗濯機・食器洗い機など家事負担を低減する家電がこれだけ増えているのに、女性たちの家事労働時間は変わっていないという矛盾。ちなみに、女性の家事労働時間の低下が大きいアメリカと対比してみると(母親の家事労働は1965年:32時間→2016年:18時間とほぼ半減 JWT調べ)、この異常事態がより鮮明化すると思います。
 
文明の進化で「効率的な仕事ぶり」が可能になったはずなのに、家事の現場ではほとんど女性の負担が減っていないのです。もっと注目すべきなのは、専業主婦の夫より、共働きの夫のほうが家事をしていないこと。専業主婦は夫のおかげか1割弱の家負担軽減が見られますが、共働きの女性の家事時間は30年前と同じです。妻と一緒に稼いでいる夫のほうが怠け者ということがわかる驚きの結果です。
 
しかし、なぜ家事負担が減らないのでしょう? 磯田道史『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』のなかに、興味深いフレーズがあります。「変動期には(中略)合理主義的な人物が登場して日本を導くが、静穏期に入ると日本人はとたんの合理主義を捨て去る。この繰り返しである……(後略)」。
 
テレビでは“おばあちゃんの知恵”的な掃除術が重宝され、便利家電を使えば手抜きだとバカにされ、手作りの食事を食べさせなければ真心がないと言われる……。茶色に染まったお弁当は「子どもが可哀想」と哀れまれ、キャラ弁のレベルは上がり、便利な掃除用品が進化すればするほど、今度はキレイのハードルが上がる。しかも外注すると「手抜きだ」とバッシング。しまいには、カビ防止のためお風呂に入るごとに浴室を全部拭けとオススメされる。女性が外で働くようになっているにもかかわらず、当然のように存在しているこういった空気と同調プレッシャー(あるいはネット文化のせいで、さらにそのプレッシャーは強まっているのかもしれません)。男女雇用均等法が成立してから30年が過ぎるなか、女性の社会進出をサポートする合理的な考え方はむしろ減ってきているような気がしていましたが、それは日本が男女平等に関する変動期を過ぎてしまった(と勘違いしている)せいかもしれません。世界はめまぐるしく変動し続けています。日本の停滞が長引いているのは、もしかしたら女性が合理主義をあまりに早く捨て去ってしまったからかもしれません。

Text : Kumiko Ohashi

  • ※日中米英印等14カ国/18~70歳女性各国500人/人口による年齢割付/オンライン調査/2016年実施

  • 大橋久美子/東京大学文学部社会学科卒、博報堂マーケティング局、研究開発局を経て、2003年ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパンに入社。広告業界で25年、アジアや日本の女性たちと向き合いながら、女性たちを輝かせるためのブランディングを行う。

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