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男の“セックスしたい欲”は文化的なもの

『性的唯幻論序説 改訂版』

この本は小説ではなくて、日本のフロイト心理学の第一人者による、セックスについての思いこみを解除するエッセイです。「やられるセックスは、もういらない」とサブタイトルにあるように、どうしてセックスは女性にとって主体的な行為ではなかったのか? なぜ、そういう社会が成り立ってきたのか? 現代の女性は本当に自由になれているのか? っていうことが書かれた本です。著者によれば、そもそも人間は“本能が壊れた生物”であり、男の“セックスしたい欲”は文化的なもので、そこには男のプライドがある。動物だったら発情期しかやらないけど、人間はいつでも恋愛してセックスできますよね。1対1で一生添い遂げるという形式が、いかに人類の歴史で日が浅いかということもわかる。
 
女の人が、自分を飾って恋を遊びとして楽しむのならいいけど、「恋愛や結婚がうまくできない自分はダメなんじゃないか」と考えて苦しんでしまうのは不幸の始まりだと、僕もこの本を読んで思いました。バブルのころ、男が恋愛にお金を使えていたころは恋愛ゲームが成立していたけど、今の時代にはもう成り立たない。人間は、自分の欲望(本当にやりたいこと)を理解して生きていくのが一番なんですが、ただ、その“やりたいこと”も誰かから押しつけられて“やりたいと思い込まされたこと”じゃないか? という可能性も考えてみてほしい。べつに「肉食系になれ」って話でもない。セックスが苦手な人は、苦手なりに楽しんでいいし、全然やらなくってもいい。
 
男も女も、完璧な相手と出会えたらそれがゴールだと思ったら大間違いです。相手のことを知って、傷つけあって、お互いに成長していくのが恋愛だと思うんです。出会いは、ただのスタートだし。それに、この世の中に最初から“完璧ないい男”なんて存在しません。付き合う男を“あなたにとっての、いい男”に育てながら、あなたも時間をかけて成長して“あなたにとっての、いい女”になっていければ、いいんです。我々が常識だ、あるいは社会の維持や幸せな人生のために必要だと思っていたことは、すべて“幻想”なんだということが納得できる名著なので、なんとなく生きづらさを感じている女性に、ぜひ手に取ってもらいたいです。
 
『性的唯幻論序説 改訂版』
岸田 秀 著(文春文庫)

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  • 二村ヒトシ/アダルトビデオ監督。1964年・六本木生まれ。慶應大学文学部中退。1997年にAV監督デビュー。痴女もの、レズビアンものを中心に独創的な演出のアダルトビデオ作品を数多く手掛けるかたわら、「すべてはモテるためである」(イースト・プレス)、「恋とセックスで幸せになる秘密」(イースト・プレス)などの著書で、恋愛やモテについて鋭く分析。女性とセックスを知り尽くした見識に定評がある。
    http://nimurahitoshi.net/

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