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行きずりの男と出会って自分を知る

『ヴァイブレータ』

これも女性作家の作品です。どうも恋愛がうまくいかなくて、ややアル中気味になった女性フリーライターの主人公が、ある夜、コンビニで出会った見ず知らずの長距離トラック運転手のお兄ちゃんの助手席に発作的に乗って、ついていっちゃう話です。寺島しのぶさん主演で映画化もされました。住んでる世界がまったく違う男とセックスして、世界は“自分がいる世界”だけじゃないことを知る物語ですが、運ちゃんが色気のあるダメ男(映画版では大森南朋さん)で、文系女子の皆さんは感情移入できるんじゃないでしょうか。
 
セックスシーンで、すごく印象的な言葉があって。主人公が運ちゃんを好きになりかけているときに、彼女のほうから誘うんだけど、男は「いま(あそこが)勃ってないから嫌だよ」って言う。それに対して彼女は「勃ってようが勃ってまいが、あんたはあんたじゃん」と。これ、僕、感動しました。女の人って相手が勃起してくれないと「自分に魅力がないんじゃないか」「愛されてないんじゃないか」と思い悩みがちですよね。そこを男もわかっているから、ついガンバルんだけど、そういう無理ってお互いにとってよくない。セックスレスの原因はそこにあるんじゃないかと思いますよ。男が勃たなくても、愛しあう手段、二人とも気持ちよくなれる手段なんていくらでもあるんです。
 
この作品の素晴らしいところは、主人公が彼との旅によって成長して、変化していくことです。ただのガール・ミーツ・ボーイではない。ストーリーだけ真似して初対面の男についてってドンドンおやりなさいって言いたいんじゃないですよ。小説の彼女はラストシーンで、自分で自分の人生をコントロールできる可能性を感じて、つまり行きずりの恋を通じて“自分”を知るんです。1999年の作品ですが、むしろ今の時代の女性たちに合っているんじゃないかな。
 
『ヴァイブレータ 新装版』
赤坂真理 著(講談社)

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  • 二村ヒトシ/アダルトビデオ監督。1964年・六本木生まれ。慶應大学文学部中退。1997年にAV監督デビュー。痴女もの、レズビアンものを中心に独創的な演出のアダルトビデオ作品を数多く手掛けるかたわら、「すべてはモテるためである」(イースト・プレス)、「恋とセックスで幸せになる秘密」(イースト・プレス)などの著書で、恋愛やモテについて鋭く分析。女性とセックスを知り尽くした見識に定評がある。
    http://nimurahitoshi.net/

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