今年のセザール賞は、ますます外国勢の存在感が増大!
フランス映画界のアカデミー賞といわれている、セザール賞の授賞式が、現地時間2月24日(金)に開催された。今年の受章結果の傾向を映画ライターの立田敦子さんが分析。
米国で制作拒否された『ELLE』はヨーロッパで支持
なんといっても、作品賞はポール・ヴァンホーベン監督の『ELLE』(原題)。この作品はオランダ出身でハリウッドで活躍してきたヴァンホーベン監督が初めてフランスで撮影した作品。2016年のカンヌ国際映画祭でワールドプレミアされましたが、自宅で何者かに襲われレイプされたヒロイン(イザベル・ユペール)が、警察に通報することもなく、独自で犯人を追いつめて行く……というストーリーとブラックユーモアに包まれた演出法が物議を醸し出した。ヴァンホーベン監督は当初、この作品を米国で撮影する予定だったが、米国の制作会社からは拒否され、主演の引き受けてくれる女優は誰もいなかったとか。コレのネタを映画化できるフランス映画界の懐の深さには今更ながらに感動します。
実際、ポリティカリー・コレクトを重用しする米国系批評では“レイプ・コメディ”などと揶揄する批評も出たものの、ヨーロッパ系の批評家はこの作品を支持。特に、難役を独特の飄々としたパーソナリティで絶妙に演じてみせた主演のイザベル・ユペールのパフォーマンスは絶品。
セザール賞は、外国人でフランス語も話せないヴァンホーベン監督が撮ったこの作品に作品賞(最高賞)を与えたほか、主演のイザベル・ユペールにも主演女優賞を授与。
結局、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされるなどユペールの演技力は、米国的なPCの観念も凌駕したことに。なんともアッパレです!
Text:Atsuko Tatsuta Photo:Getty Images