求められているのは、ストーリーのある“世界にひとつだけの服”
ファッションとその上昇的なシステムは、常にリセットしたいという欲望から成り立っているが、多くの人がこのシステムに疑問をもっている。“人とは違う”という願望を大胆に表現するために、何人かのクリエイター、またはファッションエリートは、ちょっと変わった格好をしたり、キッチュなアイテムを身に着けたり(例えば、ロゴをちらつかせた煌びやかなコーディネート、サッカーチームのパリ・サンジェルマンのスウェットをワンピースにアレンジしたり…)、とにかく規格外なことをする。しかし、多くの人にとって人とは違う願望を叶える助けとなるのは、レトロなアイテム。
「『グッチ』のアレッサンドロ・ミケーレや、『サンローラン』のアンソニー・ヴァカレロのように、多くのクリエイターはヴィンテージアイテムからインスピレーションを得ていて、このことは以前まではまだ少しタブーのように感じた」と「ヴェスティア・コレクティブ」のヴィンテージ部門を統括するマリー・ブランシェは言う。「結局、時とは皮肉なもので、ヴィンテージは現在のトレンドとも言えます。ロンドンやニューヨークにある『ビヨンド・レトロ』や、ブルックリンの『エピソード』ような古着屋には、私たちがその時々にインスピレーションを受けながら、ムードボードで分類する多くのトレンドがあります。当時の『マルタン・マルジェラ』、『アン・ドゥムルメステール』、もしくは『コム・デ・ギャルソン』といった、ネオ90年代のクリエイターのものは特に人気。バイイングというのは、エンパワーメントそのもの。マーケターたちの思惑通りではなく、希少なものほど運命的だと思い購入し、それが時代のムードを新たに作り出すのです」
何事においても大切なのは、コンセプトをよく考えること。「消費者はストーリーを探しているんだ」と語るのは、「テンダンス・インスタント(Tendance Instanct)」のアートディレクター、デルフィン・ロバート。「彼らは大量生産の中には見つけられない真実のストーリーを見つけて、それと同じものを欲しいと願っているのです」。もしくは別の時代に作られた世界にたったひとつだけの洋服。これらはオリジナルの物語を紡ぐ。人生の瞬間には、女性や若者、反逆者や貴族たちの場所や社会学的な視点があり、それぞれに物語の瞬間がある。必然的に、それらは洋服に深みを与えるのだ。
translation: ELIE INOUE
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