ロン・アラッドに続け! イスラエルデザイン最新事情
イスラエルのデザインって? 日本人にはまだ馴染みが薄いが、確実に良質なデザイナーを輩出している国でもある。世界でも評価が高まるイスラエルデザイン、その一角をご紹介しよう。
デザイン・ミュージアム・ホロンで展示されていたSalt Design Lab.も非常に興味深い試みをしているプロジェクトだ。
デザイナーのErez Nevi Panaは1983年生まれ。オランダのデザインアカデミーアイントホーヘンで修士を修め、現在はイスラエルとアイントホーヘンを拠点に活動している。彼は入念なリサーチを元に、新しい素材やデザインの概念、社会とデザインを結びつける仕組みを考えるデザイナーだ。このプロジェクトの発端は、2013年の夏の暑い日(イスラエルですからね、半端ない暑さだと)、ユダヤ砂漠でハイキングをしていたNeviさんは、死海の砂漠の背景に白いキラキラとした山を見つける。それは、死海から汲み出される塩だった。毎年2千万トンもの塩が不要となって持ってこられることを知った。宗教儀式に使われる程の神聖さを持ち、かつては通貨として機能していた塩。そんな塩にデザインで新たな価値を与えられないか、とNeviさんは考えプロジェクトはスタートした。
「Beating Salt」と題された展示では、死海が抱える問題の現状リサーチから始まり、塩の結晶を粘土と混ぜ合わせ再結晶化させるためのプロセスが展示されていた。このタイル状になった新しい素材は、伝統的な製法の塩釜で焼き固め、強度と保存性能を高めるためにさらに塩を塗られて作られる。まだ量産化できる段階ではないというが、今後が楽しみである。
Photo&Text : Keiko Kamijo