マザコンは本当に悪いことなのだろうか?
まるで絵画のように“風景”と“青年たちの肉体”と“熟女たちの笑顔”が美しい映画で、女性の考えるエロスが描かれていきます。4人で幸せに暮らしているぶんには理想の世界だったけれど、やがて息子たちは学生から社会人になって、若い恋人ができる。本当にヤバいことが起きるのは、ここからです。
一般に、女性が年下の男性と恋愛すると、5年後、10年後に相手が自分から離れていくんじゃないかっていう恐怖があるわけですよね。だけどすべてのケースが本当にそうなんでしょうか。愛情って、年齢が近くても続かないものは続かないし、歳が離れていても続くものは死ぬまで続きます。日本なんてロリコンとマザコンだらけだし、女性のほうも大っぴらには口に出さなくても、オジサンが好きな人も、自分より若い男が好きな人もいますよね。ただ、深読みをすると、この映画のストーリーからは外れますが「歳を取ることに恐怖を感じているから、若い相手を好きになっちゃう人」というケースだと、たしかに段々しんどくなっていくでしょう。
みんながロリコンとファザコン・マザコンの両方を、心のなかに持っている。世間的には“対等な関係の恋愛が正しい”ということになっているから、それ以外の道を選びにくくなっているだけであって、実際には“正しい恋愛”なんて存在しないんですよ。“あなたが幸せになりやすい恋愛・結婚のかたち”があるだけで。
男の“若い女好き”は、わりと容認されているように見えるけど、あれはオジサンたちが自分たちの満足、そして金儲けのシステムのために作り上げただけですから。人には性別を問わず、より力の強い相手に甘えたい願望と、自分より弱い相手を支配したいという欲望の両方がある。なぜ世の多くの男性が年下が好きかというと、弱い相手のほうが自分が傷つかないからであって、女の人の場合は、我が子のように可愛がるような愛し方ですよね。それで相手がちゃんとマザコンだったらうまくいくし、幸せですよ。もちろん、その道を選ぶにはリスクはあります。それが怖いなら2次元で男性アイドルを愛でているだけでもいい。
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二村ヒトシ/アダルトビデオ監督。1964年六本木生まれ。慶應大学文学部中退。1997年にAV監督デビュー。痴女もの、レズビアンものを中心に独創的な演出のアダルトビデオ作品を数多く手掛けるかたわら、『すべてはモテるためである』(イースト・プレス刊)、『恋とセックスで幸せになる秘密』(同)などの著書で、恋愛やモテについて鋭く分析。女性とセックスを知り尽くした見識に定評がある。最新刊『淑女のはらわた』(洋泉社刊)、『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(文庫ぎんが堂刊)も好評発売中。
http://nimurahitoshi.net/ -
『美しい絵の崩壊』
監督/アンヌ・フォンテーヌ
原作/ドリス・レッシング著『グランド・マザーズ』(集英社刊)
出演/ロビン・ライト、ナオミ・ワッツ、ゼイヴィア・サミュエル、ジェームズ・フレッシュヴィル
配給/トランスフォーマー
公式サイト/http://utsukushiienohokai.com/
2014年5月31日(土)~、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、横浜ブルク13ほかにてロードショー
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