おまけ:今回のアカデミー賞は“人種問題”が鍵に!
最後に、今回のオスカー候補作の傾向をみてみると……。
1.
実話を基にしている・・・『ハクソー・リッジ』『Hidden Figures』『LION/ライオン〜25年目のただいま〜』
2.
下層社会の問題が描かれている・・・『最後の追跡』『ハクソー・リッジ』『Fences』『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『ムーンライト』『LION/ライオン〜25年目のただいま〜』
3.
性別や人種・民族などの多様性を題材にしている・・・『ハクソー・リッジ』『Hidden Figures』『Fences』『ムーンライト』『メッセージ』『LION/ライオン〜25年目のただいま』
4.
黒人が主人公・・・『Hidden Figures』『Fences』『ムーンライト』
今回のアカデミー賞は、“時代の潮流”という意味で「ドナルド・トランプが大統領になったこと」が大きな影響を与えている。『ムーンライト』は、下層社会・黒人問題・LGBTと、今のアメリカが抱えている問題を内包させている点で「映画は社会の鏡である」ことを示している。また、黒人が主人公の作品が1/3を占め、俳優部門では過去最高の6人が候補となっていることは、昨年のアカデミー賞で「白人の作品ばかりが候補になった」という批判に対する反省や是正も窺える。
アカデミー賞は「どの作品が受賞したのか」ということばかりが報道されがちだが、重要なのは「なぜ受賞したのか」ということ。アカデミー賞の裏側を知ることによって、受賞結果からはハリウッドのトレンドだけでなく、今のアメリカ社会のあり方そのものも見えてくる。
Text: Takeo Matsuzaki
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松崎健夫(まつざき・たけお)
映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。