話題! 『天才スピヴェット』の名監督と小さな名俳優にWインタビュー
フランスでも日本でも、記録的なヒットとなった『アメリ』。『デリカテッセン』、『ロング・エンゲージメント』、『ミックマック』に果ては『エイリアン4』まで、興行成績と映画としての質の両方を高く評価される作品ばかりを生み出してきたジャン=ピエール・ジュネ監督は、物語の乾いた辛辣さで有名。その彼が8年ぶりの新作として放つのは、10歳の天才児がアメリカを舞台に繰り広げるロードムービー。その主役として抜擢したのは、長編映画には初出演となるたった10歳の男の子。年齢も見た目も何もかもがかけ離れた、でも最強の2人に同時インタビュー! 果たしてその結果は?
「カイルはT.S.スピヴェットのイメージとまったく違っていた」(ジャン=ピーエル)
心温まる家族映画でありながら、辛辣なアメリカ批判ともとれる内容も話題の『天才スピヴェット』。10歳の天才児の家出により巻き起こる騒動と、グッとこみあげてくる結末……。この奇想天外な作品を生み出し、『デリカテッセン』や『ロスト・チルドレン』に『アメリ』とアイロニーの裏側に人間への愛情を注ぐ作品をつくり続けてきた監督は、漂わせる雰囲気がそのままの人。それに対して主演を務めるカイル・キャトレットは利発で、大人に大しても物おじしない男の子。インタビューは気難しいけれど優しい伯父さんと、聡明で可愛い甥っ子の間でされる会話のような展開に。
―この映画には、とても強烈なアイロニーを感じました。同時にハートウォーミーであるというとても新鮮な体験をしました。
ジャン=ピエール・ジュネ監督(以下ジャン=ピエール):それはあの原作があるからかもしれない。ジャンルをミックスした作品だから。科学とポエトリー、メディアの質、子どもが抱える罪悪感、エキセントリックな家族。いろいろな要素がつまっているミックスジャンルな物語だから「○○系の作品です」と定義づけできないけれど、複雑であることは時に必要なんだよ。
―その難しい作品に、カイル君をキャスティングしたのは奇跡的なことだったと思うのですが、どうして彼を選んだのですが?
ジャン=ピエール:実はぴったりのイメージではなかったんだ。彼は(原作の主人公より)若すぎたし、身体も小さすぎる。僕のイメージにはまったく合っていなかった。2000人近くオーディションをしたけれど、誰ひとり、ぴったりの人間はいなかったんだ。でも彼には特別なものを感じた。英語以外に5か国語を話し、泣けと言われたらその場で泣ける、そして武闘のチャンピオンであるということも含めてね。
候補者たちに試演してもらったのは、父親の声を真似するシーン。あのシーンをユーモアをもって演じられたのは彼以外にいなかった。自分のイメージとは違ったけれど、彼のなかに、一緒に“スピヴェット”という人物を創り上げていく方向性を見出すことができたんだよ。
―カイル君に質問なのですが、橋を飛び越えたり、列車と並走したりなどアクションは自分で演じたんですか?
カイル・キャトレット(以下、カイル):全部自分でやったよ。水門を飛び越える1カット以外は。電車に飛び乗るシーンも! だよね、ジャン=ピエール?
ジャン=ピエール:そうそう。カイルが泣いていたときがあったけど、彼はスタントが怖くて泣いていたんじゃなくて、やりたいのにできなくて泣いてたんだよね。
―物語のなかでは、水門のシーンでT.S.スピヴェットは大ケガを負いますが、実際演じている最中にケガはしなかった?
カイル:実際はあそこで肋骨2本折ってるんだよ。T.S.はね!
―君自身は?
カイル:全然! アザひとつなかった。
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『天才スピヴェット』
監督/ジャン=ピエール・ジュネ『アメリ』『デリカデッセン』『エイリアン4』
原作/「T・S・スピヴェット君傑作集」ライフ・ラーセン著(早川書房刊)
出演/カイル・キャトレット、ヘレナ・ボナム=カーター『チャーリーとチョコレート工場』『英国王のスピーチ』、ジュディ・デイヴィス『インドへの道』『夫たち、妻たち』『マリー・アントワネット』、カラム・キース・レニー『メメント』、ニーアム・ウィルソン、ドミニク・ピノン
原題/『The Young and Prodigious T.S. Spivet』/105分/フランス・カナダ合作/
配給/ギャガ
公式HP/spivet.gaga.co.jp
公式facebook/www.facebook.com/spivet.jp11月15日(土) シネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー(3D/2D)
公式twitter/ https://twitter.com/spivet_jp