特集 2014/1/20(月)
待望の第3弾『ビフォア・ミッドナイト』公開中

恋愛映画の金字塔『ビフォア』シリーズを語りつくす!

18年前に公開された『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』、9年後の続編『ビフォア・サンセット』で恋愛映画の傑作としてファン多数の『ビフォア』シリーズ。最終章である第3弾『ビフォア・ミッドナイト』が1月18日(土)から公開中! これを記念して、女子カルチャーと映画に造詣の深いコラムニストの山崎まどかさんにエディターが直撃インタビュー。シリーズの魅力に加えて、作品に込められた恋愛的メッセージを徹底的に語り尽くします!

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“文化系隠れマッチョ”VS“フェミ子”

―ジェシーは今回、映画の後半でがんばりますよね。
そのがんばり方が陳腐なんですけどね(笑)。でもあれは長く一緒にいる大人じゃないと起こり得ないことで。出会ったばかりの楽しい時期だけで終わりにすることもできるけど、そこで諦めないで一緒にいるには理由があるんですよね。なんだかんだ言っても、2人ともお互いじゃないとダメなんだっていう。 
 
―ケンカばっかりしてしまうけど……という。
この2人の人生観のズレが会話から出ているのが面白いですよね。ズレと同時にセリーヌの負けん気が出てるんですよ。彼女は平気で下ネタを言うし。ジェシーみたいな男はそもそもは自分を崇めてくれる、話をハイハイ聞いてくれるギャルがいいんだろうけど、セリーヌは何でも口に出すしどんどん突いてくるタイプ。だけどこんな女性をつかまえているっていうのは、ジェシー的な男性にとっても希望だと思うんですよ。こういうタイプでも大丈夫なんだっていう。男女のすれ違いもあるけど希望もあるんです。セリーヌみたいな女の人も本当は自分の話をいろいろ聞いてくれるタイプがいいんだろうけど、そういう理想だけじゃないってことです。
 
―ところで、先ほどの“文化系隠れマッチョ”の生態を詳しくお聞きしたいのですが。
彼らは文化系で趣味もよくて優しいんだけど、たとえば街で女の人が絡まれていても決して助けてはくれない、みたいなタイプ。でも精神的には“俺俺”があって、モテはじめると始末が悪いんです。さらに女性から別れを切り出されたりなんかすると、「ナイーブな俺を傷つけた!」って逆上したり。危険なタイプなんですよ。イーサン・ホークとかまさにその代表だと思うんですけど、それ以外だと『ハイ・フィデリティ』のジョン・キューザックとか。
 
―まさにそうですね! わかります(笑)
彼らは女性を大事にしないわりには女性側の負担が大きいんです。慰めなきゃいけなかったり、それからわりと甲斐性なしが多くて、女性のほうがお金を出すことになったり。デートは彼女の部屋でDVDを観るとか。だけどお金の話をすると怒る、『ビフォア・ミッドナイト』のジェシーみたいに、生活の細かいことを指摘すると怒ったりするんです。
 
―そんな彼らへの対処法ってあるんでしょうか?
本当は近づかないにこしたことはないんですけど、相手のことを好きなのであれば、セリーヌがしたように、彼らの“本当の姿”を突きつけていくといいと思います。みんな壊しちゃいけないと思って大事に扱うんだけど、セリーヌはがっしゃんがっしゃん壊していきますから。若い頃だと「傷ついた」とか言って去っていくこともあるかもしれないし、それで曲を作ったり小説を書いちゃうかもしれないけど(笑)。そういう男の子も大人になるんだっていうのが『ビフォア・ミッドナイト』ではすごくよかった。ジェシーはセリーヌに言われ続けても、それでもがんばった。それで私はイーサンを初めて好きになったんです、イーサンごときでもちゃんと大人になれる!って(笑)。初めてイーサンの素顔を見た感じ。
 
―なるほど(笑)。対するセリーヌは“フェミ子”だとおっしゃってましたよね。
そこでそれを言うと正しいんだけどこじれるよ!っていうことを全部言っちゃうんですね。映画にしても小説にしても、ヒロインってあんまりしゃべらないキャラが多いから、これだけしゃべる人も珍しいんです。しゃべる人って大抵キツいキャラになりますけど、彼女は魅力的だし、チャーミングに見える。しゃべってもいいんだって思わせてくれる。

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  • 『ビフォア・ミッドナイト』
    監督/リチャード・リンクレイター
    脚本/リチャード・リンクレイター、イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー
    出演/イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー
    配給/アルバトロス・フィルム
    公式サイト/http://beforemidnight-jp.com/
    2014年1月18日(土)~、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9ほか全国公開!
     
    山崎まどか/1970年、東京都出身。文筆家。映画、本、音楽などのカルチャー全般に精通し、女子カルチャーにおける日本の先駆者的存在。 2001年~2002年に雑誌『オリーブ』で連載されたコラム『東京プリンセス』が絶大な支持を受け、著書に『女子とニューヨーク』(メディア総合研究所)、『イノセント・ガールズ 20人の最低で最高の人生』(アスペクト)、『乙女日和』(アスペクト)などがあるほか、雑誌をはじめ各メディアでの執筆多数。
    http://romanticaugogo.blogspot.jp/

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