特集 2014/1/20(月)
待望の第3弾『ビフォア・ミッドナイト』公開中

恋愛映画の金字塔『ビフォア』シリーズを語りつくす!

18年前に公開された『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』、9年後の続編『ビフォア・サンセット』で恋愛映画の傑作としてファン多数の『ビフォア』シリーズ。最終章である第3弾『ビフォア・ミッドナイト』が1月18日(土)から公開中! これを記念して、女子カルチャーと映画に造詣の深いコラムニストの山崎まどかさんにエディターが直撃インタビュー。シリーズの魅力に加えて、作品に込められた恋愛的メッセージを徹底的に語り尽くします!

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きれいごとにせずに人生に希望がもてる映画!

―山崎さんはこのシリーズのなかで今回の3作目がベストとおっしゃっていますね。
男女って長く付き合うと倦んでくるというか、相手の気持ちもわからなくなってくるし、お互いに嫌なところも見えるし、歳もとるし、長いスパンで恋愛を見せると“いい話”って出てこないと思うんです。『ビフォア』シリーズは1作目で出会って、2作目で再会して燃え上がって、3作目はそこから9年後、子供もできた2人という設定。9年も一緒にいるといいところも悪いところも見えてくるわけで。だけど諦めないでずっと一緒にいることがどういうことか、家族だからということではなく、長く付き合う意味みたいなものを考えさせられる映画だなと思います。
 
―確かに、この3作目で初めて2人が過ごした“時間”が描かれていますよね。
このシリーズは好きなので複雑な気持ちもあるんですけど、1作目、2作目はところどころ2人が“イキってる”部分もあって。1作目はヨーロッパの列車内で出会った20代の2人が、人生について語ったりしながら恋に落ちていくわけですけど、話してる内容が「薄い」と思うところもあったんです。でも3作目は1、2のようなトキメキはないけれど、40代になって2人が面白い大人になって、人間としても演技者としても成熟しているんですよね。キラキラ若くてきれいなだけじゃないんだけど、歳をとってこの2人が面白くなってる、人生って面白いんだっていう希望を与えてくれるところがすごくいいと思いました。
 
―今回、2人のケンカのシーンがとてもリアルでした。
あのケンカはものすごく典型的で、2人とも相手を説得する、支配することの天才で、お互いに自分の言い分が正しいと信じて相手をねじ伏せようとしてるんです。怒りをつのらせたセリーヌ(ジュリー・デルピー)は、個人的な話にしておけばいいのになぜか“男と女の根本的な違い”みたいにテーマが大きくなっていって。ジェシー(イーサン・ホーク)が否定しようものなら「女全部を否定することになるのよ!」みたいな。
 
ジェシーは一見、インテリで頭もよくてナイーブなんだけどずるい男で、セリーヌの話をすり替えたり、揚げ足を取ったりするんですよね。誰しもこういうケンカは身に覚えがあると思うんです。普通ならうんざりするような、悲惨なケンカなんですけど、それを大げさにせずに面白く見せて、自分のことのようだと思わせるところがすごい。
 
―まさに、身に覚えがありすぎて胸が痛くなりました(笑)。ジュリー・デルピーの歳の取り方もまたリアルですよね。
劇中でも「太った」とか「髪が薄くなった」とかセリーヌ自身が言ってますけど、それでも彼女はチャーミングだし魅力的。観てる側からしても、他のハリウッド女優は自分からは程遠いけど、「あ、ジュリーみたいにならなれるかも?」って思わせてくれる。実際、彼女は脚本も書くし映画監督でもあるインテリ女優なんですけど、整形もしてないし自然体で、女として希望がもてるタイプ。若い頃は天使みたいにかわいくて老けたらどうなるんだろう?って思ったけど、気取らない歳の取り方をしていますよね。ちょうどいい感じ。
 
―イーサン・ホーク演じるジェシーは3作目でちょっと印象が変わったな、と私は思ったんですけれども。
ジェシーのほうはどうしようもない男で、私は“文化系隠れマッチョ”と呼んでいるんですけど、まさにそのタイプ。なんですけど、この3で初めて彼のよさが見えたというか、「中身はしょうがない男なんですけどね!」とダメなところを自分でさらけ出して、受け入れてるんです。口では平等だって言いながらセリーヌにいろいろ押し付けてたり、自分の生き方を変えたくなかったり。そんな彼だけどセリーヌを愛してる、ってことがよくわかる。セリーヌと9年間過ごしたからこそ出せた部分だと思います。この映画は主演の2人が自分たちでもがっつり台詞を書いているから、イーサン自身の素顔も透けて見えてるんだと思うんですけど。

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  • 『ビフォア・ミッドナイト』
    監督/リチャード・リンクレイター
    脚本/リチャード・リンクレイター、イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー
    出演/イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー
    配給/アルバトロス・フィルム
    公式サイト/http://beforemidnight-jp.com/
    2014年1月18日(土)~、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9ほか全国公開!
     
    山崎まどか/1970年、東京都出身。文筆家。映画、本、音楽などのカルチャー全般に精通し、女子カルチャーにおける日本の先駆者的存在。 2001年~2002年に雑誌『オリーブ』で連載されたコラム『東京プリンセス』が絶大な支持を受け、著書に『女子とニューヨーク』(メディア総合研究所)、『イノセント・ガールズ 20人の最低で最高の人生』(アスペクト)、『乙女日和』(アスペクト)などがあるほか、雑誌をはじめ各メディアでの執筆多数。
    http://romanticaugogo.blogspot.jp/

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