特集 2017/3/16(木)
早耳調査隊がゆく

複製品が20万円で炎上。セレブデザイナー、ローレン・コンラッドは詐欺師か優れた戦略家か

かつてリアリティショーの先駆け「ザ・ヒルズ」でその名を轟かせたローレン・コンラッド。現在はライフスタイルブランドデザイナー、つまり自分の名前を付加価値にモノを売る、いわゆるセレブブランドのディレクターとして活躍中だが、先日立ち上げたばかりのジュエリーラインが炎上した。その理由は、「ボッタクリ疑惑」。

別のECサイトではこんなに大きくなってはじめて20万円台に昇格。

Photo : Courtesy of AnyeJewelry via Instagram

それはダニエル、あまりにも叩きすぎ? と思いきや、手作りの作品を売りたい一般人が去り、今やほとんどプロフェッショナルの売り手がメインとなっているマーケットサイト「Etsy」でも、同じく1カラット前後のモルガナイト、しかもこちらは14金にセットしたシンプルなソリテールのエンゲージメントリングなら5~6万円前後が中心価格だ。このことからも、ダニエルが付けた価格が辛口とは言い難い。いま20万円も出せばブレイク・ライブリーの推定2億円とも言われるタイプ、IIAの大粒ピンクダイヤモンドの「ロレイン・シュワルツ」によるエンゲージメントリングのレプリカすら買えてしまう(実際に“ブレイク・リング”と謳って売っているセラーもある)。

ファッションの価値がよくわからない人に「セレブ名前代」という付加価値をつけてそこそこ高く売る「LC ローレン・コンラッド」というビジネスモデル。

Photo : Getty Images

ダニエルは消費者たちに「騙されてはダメ!」と警鐘を鳴らしてくれているが、それが届かない層、つまりそもそもそんなにジュエリーの知識もなく、ジュエリーブランド、いやファッションでも“ブランド”とほとんど縁がないであろう「kohl's」の消費者を、「ローレン」ブランドのターゲットにしたあたりが非常にあざといのだ。オバマケアの廃止に揺れているアメリカで、トランプ大統領に投票した人のほとんどが、低所得者層ほどお得なオバマケアの恩恵を受けていたのを知らないでいたことからもわかるように、外界とあまり接触がなく、日本のように皆がおシャンティなブランドを知っているわけではないのがアメリカという国の実態。多くの“有名人ブランド”が跋扈する米国でも、イヴァンカ・トランプのようなとてつもなく目立つ存在なら即座に不買運動を招いたことだろうが、そこまでではない自分の半アマチュアなブランド価値とターゲットを本当によくわかっていらっしゃるとしか言えないあざとさを垣間見せたのが今回のローレン・コンラッドのファインジュエリーラインだ。
 
ソーシャルメディアのおかげで消費者がどんどん賢くなっている今、こうしたネームビジネスも一歩間違えば“ガールボス”ことソフィア・アモルーソの「ナスティ・ギャル」のようにいとも簡単に破たんしていくもの。一般人ではなく本気のファッションブランドが必死に戦っている今、アマチュア的なビジネスはよりタイトにブランディングしていく必要がある。ファッションブロガーによるクロージングラインが現れては立ち消えてゆく原因は、ターゲットにしている消費者層が単にファッションコンシャス、つまりは賢い層だったからだ。そこをいち早く見抜き、ファッション感度の低い人に高く売りつけるローレン・コンラッドのビジネスモデルはあざといが、確実に賢い。これを「詐欺」と呼ぶのも「商売上手」と呼ぶのも、消費者次第。今後、いい意味でも悪い意味でも、より注目していく必要があるだろう。

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Text : Ryoko Tsukada

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