特集
2017/02/15(水)
福田フクスケの「ドラマのようには生きられない」 Vol.2

女子会はやめなくていい! ドラマ版「東京タラレバ娘」は、アラサー女子の不幸を癒せるのか

“くすぶり男子”“ノマドセックス女子”などの名キャッチを生み出し、タレント批評から差別問題まで硬軟織り交ぜたコラムで編集業界に旋風を巻き起こしている編集者・ライターの福田フクスケさん。脚本家や演出家まで必ずチェックするドラママニアでもある福田さんが、旬のTVドラマに見る男女関係を考察する連載。第二回は原作に反旗を翻し、異なるメッセージを送り続け、2017年最初のクールで話題度No.1のNTV「東京タラレバ娘」を読み解く。

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原作とは異なるからこそ、新しいメッセージ性を感じる実写版「タラレバ娘」。

(C) NTV

33歳→30歳→28歳という“逆サバ・ロンダリング”への違和感

2014年、その疾走感にあふれた説教スタイルで、「お前らはもう若くない」「結婚したければ妥協しろ」という往復ビンタをかまして世のアラサー女性を震撼させた大ヒット漫画『東京タラレバ娘』が、満を持して今年、実写ドラマ化を果たした。

しかし、主人公の脚本家・鎌田倫子のキャスティングが吉高由里子と発表されたときから、「お、おう、そうきたか……」という戸惑いが一部の原作ファンの間を漂いはじめたように思う。ネイリストの香を榮倉奈々、居酒屋の娘・小雪を大島優子が演じるとアナウンスされるに至って、その違和感はより確かなものになった。

もちろん、恋愛に決して不自由していなさそうな美人女優がこの役を演じても……という理由もあるだろう。だが、日本の俳優業界における美のインフレ、すなわち“冴えない凡人キャラも美男美女が演じがち問題”については、今さら取りざたすることでもない。
「だまれ、小僧! 改行と行間だらけのエモいツイートばかりする女に、アラサー干物女の不幸が癒せるのか!」と、私の心の中のモロの君が、美輪様ボイスで叱咤してくるが、それについては言うだけ野暮というものだろう。

問題はそこではない。原作では33歳だった倫子・香・小雪の年齢が、ドラマでは30歳の設定に引き下げられ、そしてそれを実年齢28歳(榮倉奈々は2月12日で29歳になったが)の女優が演じるという、巧妙な“段階的逆サバ・ロンダリング”が行われていることにこそ、違和感の本質はある。

それと同時に、倫子が“駆け出しの売れない脚本家”という設定に変更されているのも気になる。原作では、「アラサー女の使えるモノは貯金だけ」という台詞がある通り、ネイルに3万円かけたり、アロママッサージ&真珠パックに2万円注ぎ込んだりと、バリバリ働いていてそこそこの財力があることが彼女たちの強みでもあり、救いでもあった。

ところがドラマ版の倫子は、一人暮らししているアパートの家賃を払うのもギリギリの生活(ちなみに第3話で画面に映った通帳の預金残高は96,377円だった)。当然、事務所を構える余裕などなく、原作では倫子のアシスタントだったマミ(石川恋)は、テレビ制作会社のADになっている。

わざわざそんな設定変更を加えてまで、倫子たちの年齢を下げ、生活レベルを落としたのは、その方が地方まで含めた幅広い視聴者層を取り込めると判断したからだろうか。
しかし、“それなりに自立していて小金もあるが、恋愛・結婚だけはうまくいかないまま30代中盤を迎えようとしている”という設定だったからこそ、「これは私のことだ!」とピンポイントに心をえぐられた原作ファンにとって、このドラマ版の設定改変はいささか生ぬるく感じただろう。

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Text : Fukusuke Fukuda

  • フリーライター・編集者。「男の自意識」を分析したジェンダー論を華麗に差し込みつつ、幅広いカルチャーを斜めから分析したコラムでオンライン上でまたたくまに人気を得る。雑誌『週刊SPA!』『GetNavi』、webメディア「SOLO」「マイナビニュース」などで執筆中。
     
    Twitter @f_fukusuke 

  • (C)NTV

    「東京タラレバ娘」(NTV)
     
    東村アキコ原作の人気マンガを実写ドラマ化。崖っぷちの脚本家30歳・未婚・子なしの主人公・鎌田倫子と友人たちが、“女の幸せ”を求めもがくストーリー。物語が進めば進むほど、原作とはまた違ったメッセージを伝え、最終回までどう展開するのかに注目が集まる。
     

    公式HP/ http://www.ntv.co.jp/tarareba/ 
    公式twitter @tarareba_ntv
    公式Instagram  @tarareba_ntv

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