女子禁制! 美少年たちの秘密の花園イートン校とは?
男子だけが入学することを許される英国パブリックスクール。その頂点でもあるイートン校は、とりわけ英国式階級のトップに君臨する良家の子弟が集まる“秘密の花園”。政界からハリウッドまで活躍する世界的な人材を生み出すことで知られているが、その内幕が晒されることはなかなかない。ところがそんな禁断の扉を開けたひとりの日本人女性写真家がいた! 特別な許可を得た貴重すぎる写真と彼女の言葉を読み解きながら、イートン校の知られざる謎と美をここに公開。
イートン校のファッションにみる伝統
イートン校の生徒は13~18歳をここで過ごします。上流階級の子どもばかりではなく、優秀な学業を修めている子どもを奨学生として迎え入れたり、留学生も増えていますが、誰一人としてマナーのなっていない子はいません。英国紳士の卵として厳しく躾けられた人がもつ特有の作法の美しさがあるんです。たとえば、不快感を表現するときに婉曲的に表現したり、ケチと言っていいくらい古いものを大事にしたり、食べ物も食べられるだけささやかに皿に取ります。
上流階級にもかかわらず、イートン校の生徒の制服である燕尾服の裏地は、擦れてザラザラになっています。先輩たちが着用したお下がりを、後輩たちが受け継ぐからです。
25ある寄宿舎は、すべてが縦割り社会で、その強い結束は、スポーツの対抗戦ややボートレースで見られる、寮ごとに異なるユニフォームに現れています。
「ジェントルマンは黙って……」
イートン校の生徒は全員大学に進学しますが、オックスフォードやケンブリッジといった難関大学に入学するのは3割くらいです。経済的に十分な教育を受けられない家庭出身の学力優秀な子どもたちが全国から集められ、「キングズスカラー」と呼ばれる奨学生となってオックスブリッジへの高い進学率を維持しています。先祖代々イートン校に通っている上流階級出身の生徒にとっては、大学進学のための学習もさることながら、真の目的は「ご学友」を作ることにあるのではないでしょうか。だからこそ、母親は自分の夫がどんなに嫌がっても、息子を入れたいと思うのかもしれません。
ただ、仲間づくりは自主性に任せられています。食堂で一人で食べている留学生を見かけることがありましたが、先生はみんなで食べるように促したりしません。孤独が好きな人もいますし、助け船を出したりするのは、ジェントルマンにとっては野暮なこと。さびしい子はずっとさびしい学生生活を送ることになるので、厳しい環境ではあります。ですが、厳しさと裁量、言い換えれば自由とのバランスをとっているのです。仲間をつくりたい子はそうできるよう自分で行動しないといけませんが、逆にどんな人でも放っておいてもらえる。徹底した個人主義がそこにあります。
私が撮影していた期間にはウィリアム王子も在学していたのですが、彼は背が高くただでさえ目立つうえ、いつも多くの取り巻きがいたので、すぐに見つけられました。
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大串祥子 (写真家)
佐賀県生まれ。東京外国語大学イタリア語学科卒業。株式会社電通にてコピーライター・CMプランナーとして勤務。 退社後渡英、ロンドン・カレッジ・オブ・プリンティング・ディストリビューティブ・アンド・トレード(現:ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーション)写真学部フォトジャーナリズム学科(Postgraduate Diploma)にて写真を学ぶ。
在学中に始めたプロジェクト『アドニスの森 Men Behind the Scenes』では、イギリスの名門パブリックスクールイートン校、ドイツ国防軍の兵役、コロンビア軍麻薬撲滅部隊など、秩序、制服、階級、不条理にいろどられた究極の男性社会に潜入し、女性の視線から男性の美と謎を追い求めている。
2004年より近代五種を撮影開始。2008年北京五輪における国際近代五種連合UIPM公式フォトグラファーに任命され、同種目を撮影。 2009年ドイツのRalf-Hellriegel-Verlagより写真集『MODERN PENTATHLON』を出版。 2011年3月11日の東日本大震災を機に、故郷・佐賀へ居を移す。
同年秋から13年夏にかけて、『アドニスの森 Men Behind the Scenes』 第2章 アジア篇を中国・少林寺にて撮影。
2014年11月、写真集『美少年論 Men Behind the Scenes』を佐賀新聞社より出版、同月、銀座ヴァニラ画廊にて、同テーマの個展を開催。