特集
2015/11/16(月)
ELLE CINEMA AWARDS 2015

映画ジャーナリストが選ぶ! 2015年のMYベスト映画【前編】

映画好きなエル読者の投票により、その年のベスト映画を決める「ELLEシネマ大賞2015」がいよいよ今年から開催! 読者投票に先駆けて、エルでおなじみの映画ジャーナリスト9名が、部門別に2015年のベスト映画&俳優を選出。映画を知り尽くしたプロたちが選んだベスト3を、前編、後編の2回に分けてお届けします。

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『くちびるに歌を』DVD発売中 (c) 2015 『くちびるに歌を』製作委員会 (c) 2011 中田永一/小学館

日本映画部門BEST3/門間雄介さん

『くちびるに歌を』
途中、どこからか覚えてないけど、涙があふれて最後まで泣き通しだった。あざとく泣かせる催涙映画と違って、細部までよく練られた脚本で観る人の心を鷲づかみにする、数年後、数十年後まで残る映画。『ウォーターボーイズ』直系の部活青春ものと勘違いされがちな気がするけど、全然そんなことはない。離島の中学合唱部でさまざまな人間模様が交錯する、大人の鑑賞に堪えうる群像劇。『アナ雪』くらいヒットしても良かったのにと、本気で。
 
『駆込み女と駆出し男』
日本のメジャー映画には、どれもこれくらい野心的であってほしい。骨太なテーマ性と高い芸術性を兼ね備えつつ、それでいて大衆的な娯楽性を失わない、『駆込み女と駆出し男』みたいに。江戸後期の時代背景を縦横に織り込んだ、ある種高尚な作品ながら、観終わってまず口をつくのは「面白かった!」の一言。大泉洋扮する主人公をはじめ、当時の息づかいそのままな人々のしゃべりが小気味よい。女性たちの自立の物語としても日本映画では白眉。
 
『恋人たち』
2015年は是枝裕和、黒沢清、塚本晋也ら、90年代以降の日本映画を牽引してきた監督たちが揃って新作を発表し、そのどれもが高いクオリティーを誇る1年だった。なかでも橋口亮輔監督の『恋人たち』。前作から7年間、映画が撮れなかった自身の心情を反映させ、世相を照らしつつ、まだ名もない役者たちから渾身の演技を引き出した一作は、悲痛だけど力強い。鬼気迫る作品とはこういう映画のことを言うんだろうな。最後に射す光明のまばゆさ。
 
●ベスト男優
永瀬正敏(『あん』)
男優賞は『あん』の永瀬正敏、一択。大写しになる背中だけで、哀愁も挫折感も、純粋さも優しさもすべて語りつくす、もっともシンプルで、もっとも雄弁な芝居。生きざま=芝居を追求してきた、彼史上最高の演技じゃないか。 
 
●ベスト女優
池脇千鶴(『きみはいい子』)
画面に登場して、一言発した瞬間に、その人となりが見える。すばらしい芝居がそういったものであるなら、『きみはいい子』で池脇千鶴が見せるのはまさにそれ。所帯染みた主婦のあの温かみ、人臭さを、他に誰が出せるだろう?

  • 門間雄介/編集者・ライター。構成を担当した『二階堂ふみ アダルト 上』が発売中。手前みそだけどとっても面白いです。今回挙げた以外に日本映画でベストを選ぶなら、ベスト新人監督映画は竹内里紗監督『みちていく』ってことで。

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